「・・・どうなっている?」
金の長い髪をなびかせた、美しい女性が声をかける。
ドレスのような服を着ている。どこかの上流階級の娘のようだが、
背に生えるその黒い翼が、彼女が人に在らざる者である事を証明している。
「あぁ、ゼルグの奴が調査してんぜ。」
どこかタルそーに返事をする男。
この男にもまた、漆黒の、悪魔の翼。
「ゼルグか、それなら一応は安心だがー」
ため息をつきながら女は言う。
「未だに報告がないというのはどういう事だ。」
「あいつも死神の長だろ。いろいろ忙しいんだろーよ。
気長に待ってろよ、シニーベル。」
「気長に待て、だと・・・?」
シニーベル。そう呼ばれた女は顔を引きつらせながら怒鳴った。
「そう言ってもうどれだけ経つ!?
未だに我らが魔王・ガルム様の異変については何も解明されていないんだぞ!?
お前は何も思わんのか!?バラス!」
「まぁまぁ、そー怒んなよ。」
バラスは眠そうに目をこすりながら言った。
「ヒステリー起こすと、せっかくのカワイイ顔が台無しだぜ?
ガルム様にも嫌われちまうかもよ?」
「な・・・!」
顔を赤く染めるシニーベル。
「ったく、ほんとにおめーって奴ぁわかりやすいな。ケケケッ!」
「う、うるさいっ!」
シニーベルの拳が空をきる。
「まったく、何でお前みたいなのが私と一緒で魔王側近をやってるんだか・・・」
「実力じゃねーの?はははっ!」
「おやおや、ずいぶん賑やかだね★」
急に2人とは違う声がした。
それまでふざけていたバラスの顔も真剣なものへと変わる。
「やぁ!2人とも、元気?」
「スコーピオン・・・っ!」
「そう言えばさ、こんなもん拾ったんだけど、いる?」
そう言ってスコーピオンは背負っていた『それ』を乱暴に放り投げた。
「・・・ゼルグっ!?」
それは変わり果てたゼルグその人だった。
縦に引き裂かれたその身体は、相当な剣の使い手によって殺されたことを証明していた。
「イヤだなぁ、そんな怖い顔しないでよ★
僕はただそれを見つけたから拾ってきただけなんだからさ★」
肩をすくめるスコーピオン。
「じゃあごゆっくり、お2人さん。僕はまだ仕事があるんで失礼するよ★」
そう言って、スコーピオンは再び部屋の外へと出て行った。
「・・・あいつが来てからだ、すべてがおかしくなったのは・・・っ!」
腹立たしそうに唇をかむシニーベル。
「あいつのことを調査している奴は必ず途中で死んじまうしな。
しかも誰にやられたかすら解らんままだ。
本来ならオレかお前が調査すべきなんだろーが、
お互い忙しくてンな事してるヒマもねーときた。
ったく、何もかもヤツの思い通りって感じだぜ。」
バラスはツバを吐きすてた。
「あいつが来て以来、それまで長年お世話をしてきたオレらに代わって、
あいつが腹心の座についちまった。
ハァ・・・ガルム様も一体何考えてんだかな。」
「バラス!いくらお前と言えど、ガルム様への悪口は・・・」
「『私が許さんっ!』だろ。もう聞き飽きたぜ、その言葉は。」
シニーベルを制し、バラスは天を仰いだ。
「オレだってガルム様の側近だ。
どーあっても命令には従う、当たり前のことだ。
たとえ・・・ヤツの思い通りになってる今も、な。」
そう言ってシニーベルを見つめる。
「だから、オレ達は戦うんだよ。」
「バラス・・・」
シニーベルはバラスに背を向けた。
「ガルム様は、魔界は、そして我々魔族は・・・どうなってしまうのだろうな。」
「・・・さぁな。」
バラスはそう言うときびすを返し、そのまま部屋から出て行った・・・


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