「強くあるためには正義と言う言葉に惑わされずに
    ただ、己の信念の通り生きて行けば良いだけだ。」
             カール・C・ローズ「虚無」第1章

「諸君!よく集まった。疲れは癒えているか?
さて、これより第26回ジェイサード学園入学試験を開始する!
準備はいいか?心してかかるがいい!」
試験官が壇上に立って言う。
「筆記試験の者は教室へ行くように!
実技試験の者はそのままあちらに注目するがいい!」
試験官の言う方を見ると、壁から大きな垂れ幕が落ちてきた。
「おおおっ!」
歓声を上げる受験者たち。
そう、その垂れ幕には受験者の名前が、
ブロック別に分けて書かれていたのだ。
「今年、1次試験に合格した者は456人。
そのうち、実技を選択した者はおよそ300人だ!」
オレとムサシは自分の名前を探しながらうんうんと頷く。
「よって、試合を円滑に進めるため、30のブロックに分けることにした。
諸君らには自分と同じブロックの9人の受験生と試合をしてもらう。
その中から成績上位の者1名を合格とする!」
なるほど、10ブロックではなく30ブロックとは・・・
確かに、学園の講師陣は腕利きのERAZERばかりと聞く。
全ての教師が審判としての技能を揃えているなら理解できる。
それに、この学園の魅力の1つである格闘場。
そこを利用するならいっぺんに30試合するくらいのスペースは十分だ。
「ただし!」
そんなことを考えていると再び試験官が口を開いた。
「筆記試験を受けている生徒がいることを忘れるな。
通常、もちろん今年も、
筆記試験の合格者は10人だが、
もしも同点合格が出た場合は、
実技の30人の中でも実力的に劣ると思われる者を不合格にする場合もある。
その逆もまたしかりだ。結果もそうだが、試合内容もチェックされることを忘れるな!」
「ふぅ、大変でござるな。」
ムサシが肩をすくめる。
「っと、リックス、お主の名を見つけたでござるよ。
21ブロックのところ、ほれ!」
言われてオレは垂れ幕を見る。
確かに21ブロックの中に自分の名前を見つけた。
「ん、お前の名前はないな・・・
ってことはお前とは戦わずにすむワケか、ムサシ。」
オレはムサシの肩をぽんと叩いた。
「そうでござるな、ラッキーでござる。
っと、みんな自分のブロックを確認して移動を始めたようだ。
我々もそろそろ行かなければヤバいでござるよ。」
「そうだな、じゃあがんばれよっ!一緒に入学式に出ような!」
オレはそう言うとムサシと別れて格闘場へ向かって歩き出した。
21ブロックはちょうど1番端のリングらしい。
てくてくと歩いて行くとリングの周りに人が集まっている。
「おっ!来たね、キミが最後だよ。」
そう言ったのは白衣を身につけ、丸いメガネを掛けた20歳くらいの男だった。
たぶん、学者系の人なのだろう。
細身な身体で、目が綺麗だ。
何か優しそうな人だな、という印象を受けた。
「えーっと、ぼくはこのブロックの試験官、ウォーレン・マラーです。
一昨年ここを卒業したばっかしなので、
何かと迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくお願いします!」
そう言うとマラー先生はぺこり、と頭を下げた。
「えっと、それじゃあルールの説明をするね。
みんなにはこれを付けて戦ってもらいます。」
と、言ってマラー先生は肩当てのようなものを袋から出し、みんなに配った。
「何すか?これ。」
受験生の1人が聞く。
「これはねー、『ライトガード』って言う新開発の防具なんだ。
スイッチを入れると・・・」
「何も変わりないですけど。」
「ううん、ほら、触れないでしょ?」
マラー先生が手を伸ばしても受験生の体にはなぜか届かない。
「バリアー!?」
「うん、その通り。体全体をカバーできる高性能バリアーが発生するんだ。
ただし・・・」
「ただし?」
「ある程度のダメージを受けると壊れちゃうから注意してね。」
おい。
全員が同時にツッコんだ。
てゆーかそれって防具のイミあるのか?
「うん、何せまだ開発中だからね。
だから今年のルールは、『相手のライトガードを破壊した方が勝ち』
ってことになってるんだ。」
人差し指を立て、笑顔で説明するマラー先生。
「じゃあ、早速第1回戦を始めようか。
えーっと、アーノルド・ブレイザーくん対リックス・クルズバーンくん!」
「おう!」
「よっしゃ、やってやろうじゃねぇかっ!」
オレはそう叫ぶと、ライトガードを付け、リングへと上がった。


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