「期待さえしなければ、裏切られることはない。
         夢をさえ見なければ、絶望することはない。」
                  ある少年のセリフより

「はぁ・・・はぁ・・・」
あれから2時間。
ようやくオレは自分の家にたどり着いた。
まさか・・・自分の庭みたいなこの森で迷うとは・・・
まったく、予想もしてなかったぜι

「ただいまーっ!」
と、勢いよく扉を開けたオレの目の前にいたものは・・・
「やぁ、おかえり。ずいぶんと遅かったんだね。」
「あんたは・・・」
オレの目の前にいたのは、つい2時間ほど前、
森でオレを襲った死神を瞬殺した、あの赤い髪の男だった!
「よかった。忘れてたらどうしようかと思ったよ。ハハッ★」
「・・・手に剣を握り締めて、人の両親に刃を向けながら言うセリフとは思えねぇけどな。」
「リックス、早く逃げ・・・」
母さんがそう言い終わらないうちに男は刃を母さんの首に突き付け、
「ダメじゃないか。今は僕が話しているんだよ?」
と、まるで友達と話をする村の少年のような口調で言った。
「あ、紹介が遅れたね。僕はスコーピオンって言うんだ。よろしく。」
燃えるような・・・というよりは少しくすんだような赤毛。
東の国で栄えていたという古代文明の伝説にでてくる、
空想上の食物「サツマイモ」のような色をしている。
眼の下には黒い三日月のタトゥーを入れ、
魔玉をはめ込んだ上等そうな鎧に身を包んだ少年は言った。
「てめぇ・・・今何やってるか解ってるのかっ!?」
「うん。けど、遅かったねぇ・・・
もっと早く帰ってこれると思ったんだけど・・・」
「そういう問題じゃねぇっ!」
その瞬間!
ナイフの形をした闇の塊がオレの足元に突き刺さった!
「ダメだよ、暴力的解決は。僕がまだ話をしてる途中でしょ?」
笑顔を浮かべてスコーピオンが言う。
コイツ・・・
汗が頬をつたっていくのがわかった。
かなり・・・できる!
「君の目じゃ見えなかったかな?
まぁ、魔王ガルム・ヴァグラー様直伝の技だから、仕方ないよね。」
「ってことは・・・てめぇは魔族か。」
「フフッ★しかし、リックスくん、あまり強くはないみたいだね。」
スコーピオンはオレの言葉を微笑で返し、父さんと母さんの方に向き直った。
「2人とも、元優秀なERAZERだったのに・・・
もしかして、意図的に戦闘から遠ざけていたのかな?」
「なっ・・・!」
父さんと母さんが驚くような声をあげる。
っつーか、オレだって今初めて知ったぞそんなこと!
「だいじょうぶだよ。僕らが責任を持ってリックスくんを立派なERAZERにしてあげるから。」
「まさか・・・!」
父さんの顔が青くなる。
「リックスに・・・我が友ダインの十字架を背負わせるつもりかっ!?」
「何を言ってるの?ただ僕らは夢見る少年の願いを叶えてあげるだけだよ。」
無邪気に笑うスコーピオン。
「わかってくれたかな?」
「てめぇは一体何を企んで・・・っ!!」
スコーピオンはぶつぶつ何かをつぶやいている!
反射的にオレはスコーピオンにつかみかかった!!
「・・・遅いね、リックスくん。」
哀れむようにスコーピオンがつぶやき、その瞬間!
オレの、たった2人の家族は――
ただの・・・灰になってしまった・・・
オレとスコーピオンとの距離は、わずか1メートルほどだろうか・・・
あまりにも残酷な――
両親との別れだった。
「父さん・・・母さん・・・」
さっきまで・・・ほんのついさっきまで生きていたのに・・・
オレは床に両手をつき・・・涙を流した。
「残念だったね。僕を殴りつけれれば、呪文の詠唱は止まったのに。」
「ゲシッ!」
しゃがみ込み、オレの前に現れた無邪気な殺人者を・・・
オレは自分でもわからないうちに殴りつけていた。
「てめぇが・・・てめぇがあっ!!」
「へぇ・・・すごいじゃないか。今のパンチは僕でも見えなかったよ。」
そう言い残し、奴はクルッと1回転、そして壁を壊して外へ逃げた!
「ふざけんじゃ・・・ねえっ!」

「はぁ・・・はぁ・・・」
「やぁ、待ってたよ。」
気づくとオレは、森の奥深くのあの場所に戻っていた。
「さて、じゃあ行こうか。」
そう言ってスコーピオンは、ケルベロスが乗っていた台に触れる。
「僕を殺したいなら・・・ついてくることだね。」
スコーピオンは台に乗り、光とともに消えた。
「・・・行ってやろうじゃねぇか!」
オレは、足を踏み出した。


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