「正義の味方気取りかい?
    正義と言う言葉の意味すら知らないくせに。」
             新聞に掲載された社会風刺のコメントより

こうして試合は始まった!
序盤、対戦相手・アーノルドの闘気を纏った拳による攻撃に苦戦し、
相手のペースに巻き込まれていったオレだが、
徐々にではあるが、相手の攻撃パターンを読むことができるようになった。
「破砕剣っ!」
オレの剣技が闘技場に響く。
「くっ・・・!」
相手もさすがに堪え切れずに後ろに飛ぶ!
オレはその位置から、一歩も動かずに次の技を放った!
「疾風斬り。」
威力こそ低いが、遠距離からの衝撃波による攻撃が可能なこの技。
オレはアーノルドの着地する場所へ向けて、弧を描くように放った。
アーノルドは焦りながらも、続けて後ろへ飛び、間一髪で技から逃れた!
さすがに1次試験を突破しただけあって、対応力がすごい、が。
その次の瞬間には、オレは彼の姿を完全に捉えていた。
「これで、終わりだっ!」
二連斬が直撃、「パリーン」と、ガラスの割れたようなあっけない音と共に、
アーノルドのつけていたライトガードは破壊された。
そう、破砕剣と疾風斬りはあくまで捨て技。
オレは疾風斬りを放った直後、猛スピードでアーノルドを追いかけ、
疾風斬りをよけた直後の彼に向かって、飛びながら二連斬を放ったのだ。
オレが見つけた彼の弱点。それは「攻撃をかわす時、決まって後ろへ飛ぶ」ということと、
「ピンチになると相手の姿が見えなくなる」ということだった。
「勝者!リックス・クルズバーンくんっ!」
マラー先生が叫ぶ。
「よっしゃあっ!」
「フッ・・・」
喜ぶオレの前に立ちふさがるアーノルド。
「負けたぜ、ったく。」
そう言いながら手を差し出す。
「生まれて初めてだよ。完敗を認めるなんてな。」
「アーノルド・・・」
オレも握手をしようと手を出した。が、次の瞬間!
「パシッ!」
彼はオレが握手しようと出した右手に平手打ちを食らわせたのだった。
「あ?」
待て。先に手を差し出したのはアイツだろ?何でオレが握手を拒否されなあかんのじゃ。
オレが理不尽な疑問と怒りに震えている間に、ヤツはとっくにリングを降りてしまっていた。
「へっへっへ!なぁ〜んて言うと思ったかよっ?
言っとくがオレは負けたなんて思っちゃいねーよ。
いきなりオレをがけっぷちに追いこみやがって、
これで次負けたなんて言ったらただじゃおかねーからなっ!」
早口で言いたてるとダッシュで逃げるアーノルド。
結構照れ屋なキャラらしい。
「殺ス。」
オレはわざと怒ったフリをして彼が逃げていった方向を見つめていた。
が、それはあっと言う間に終了した。
「あの、次の試合できないんですけど。」
と、マラー先生に困った声を出されたからであるι

初戦をモノにしたオレはその後も連戦連勝!
このブロックは試合消化がかなり早く、
オレは午前中を終えた時点で7試合を消化、7勝をマークしていた。
「それでは、午前の試合は終了します。
残りの試合はお昼休みの後、行いますので、
規定の時間までにまたここへ集まって下さい。」
マラー先生が全員に言う。
「すみません、ムサシ・アイハラって奴、
何ブロックにいるか分かりますか?」
とりあえず、ムサシを探して一緒にメシでも食べよう。
オレはそう思って、本部に帰ろうとするマラー先生を呼び止めた。
「ムサシくん、えーっと・・・17ブロックだね。
ここから左に4つ目のリングだから。
あ、まだ試合やってるね。」
確かに、17ブロックのリングの周りには多くの人が集まっていた。
「あ、ありがとうございます。」
しかし、他のブロックの連中まで集まっているようだが、一体どうしてなのだろう。
ブロックが別であれば、わざわざ見に行くほどのものでもないハズだ。
17ブロックに一体何が・・・?
そんなことを思いながらオレは17ブロックへと向かって走り出した。
「どいたどいたーッ!」
オレは観客の隙間を縫うようにしてリングへ近づいた。
人垣を抜け、戦っている2人の姿があらわになる!
「ムサシ!?」
そう、この観客の中、戦っていたのはムサシその人だった。
「くっ!」
技を仕掛けられ、こちらへブッ飛ぶムサシ!
その瞬間、周りにいた人達が一斉に避難する。
「え、あ!?」
オレに飛んできたムサシが直撃する。
「痛たたた・・・申し訳ないでござる。」
痛そうに頭をさすりながら謝るムサシ。
「お前、何やってんだよ。大丈夫なのか?」
「おお!リックス、何故ここに!?」
ムサシは大袈裟に驚いた素振りを見せたが、すぐに真顔に戻って言った。
「すまぬ、どうやら一緒に入学式に出るという約束、
果たせそうにないでござるよ・・・」
そう言って立ち上がり、相手の方へ向き直る。
「え・・・何でだよ!?」
「そろそろ、決着をつけさせてもらおうか。」
オレの声をかき消すかのように、声の主ームサシの対戦相手ーは静かに言った。
そう、この国で最強の戦士。
現時点で既にERAZERすらもはるかに凌ぐ実力を持つと噂されるその男。
セファイド・ハートキーは。


第十四話も見てみる
目次に戻る
一覧に戻る
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送