「『無駄』とはどういう意味だい?
    やってもみないうちに言う言葉じゃないだろう?」
             ある浮遊霊のセリフより

「くっ!」
ムサシは大きく跳び、セファイドの後ろに回った。
「やはり・・・噂通りの実力者でござるな。
力、技術、スピード・・・どれをとっても拙者とは大違いでござる。」
「フン。」
セファイドはムサシのセリフにも、全く変わらぬ表情のままで言う。
「他人の評判や噂など、どうでもいいことだ。
そんなことより・・・早く決着をつけることの方が重要だと思うがな。」
圧倒的な実力。
それを持ちながらのこの発言は少々イヤミな感じさえする。
「オレには時間がない・・・
くだらんおしゃべりに興じているヒマはないのでな。」
そう言って、どうやって隠していたのか、
マントの下から槍を取り出し、構える。
「なるほど・・・『天下無敵の槍使い』の実力発揮か?
間違いなくこれでケリをつける気だ・・・」
「おお怖えぇ。アイツとだけはやりたくねェなぁ。」
ギャラリーの間からそんな声が次々もれる。
「フフフ・・・」
「何が可笑しい?」
そんな中、突如静かに笑い出すムサシにセファイドが尋ねる。
「いや・・・」
ムサシはセファイドを見据えるとこう語った。
「失礼。しかし拙者、こんなに楽しいのは生まれて初めてでござるよ。
強い者と戦う独特の緊張感。まさに血湧き肉踊るとはこのこと!
まさに今、拙者はワクワクしているでござる。」
剣を構えるムサシ。
「はぁぁぁぁっ!」
先に仕掛けたのはムサシ!
幾つもの斬撃がセファイドを襲う!
しかしセファイドはそれをことごとく防御し、受け流す。
そしてムサシのスキをつき、反撃に出る!
・・・がさすがにムサシも読んでいたか。
跳んで今度は直接セファイドへ斬りかかる!
するとセファイドも跳んで空中で2人の姿が交差する!
「キィン!」
金属音を残し、2人は着地する。
「フン。」
「まだまだっ!」
そして再び2人の技の応酬が始まる。
正直言って、これ程の戦いが見れるとは思っていなかった。
なるほど、これならば無関係なブロックの試合といえど、
これほどまでの人数が集まるのも理解できる。
オレは目の前で見た試合のレベルの高さに改めて身震いをした。
だが、やはりいかんともしがたい実力差があるのもまた事実である。
決してムサシが弱いわけではない。
今のオレにこの戦いができるか、と言われれば答えはノーだし、
辺りを見回してもムサシに勝るような剣の使い手はいない。
最初に会った時は感じなかったムサシ本来の強さを、
オレはここに来て初めて感じ取れた、というのが正直な感想だ。
だが・・・ただセファイドが強すぎるのだ。
やはり、一見拮抗しているように見える試合だが、
ムサシの方に多少ダメージがたまっている。
しかし、セファイドは全くダメージを受けていない。
全ての攻撃を、受ける直前に叩き落しているのだ!
しかも、驚くべきことに・・・息ひとつ乱していないのである!
ここまで来ると、「この国最強の戦士」などと言うよりもはや「化け物」だ。
こんな人間がいるとは、信じられない。
それはオレだけじゃなく、ここにいる全員が同じ気持ちだろう。
「次で・・・終わりにするでござる。」
「ああ、これで終わりだ。」
何度目の対峙だろう。
しかし今回はやけに時が経つのが遅く感じた。
決着の前、というのはだいたいこんな感じなのである。
「青鳴流奥義・飛雄斬撃剣っ!」
「食らえ・・・エターナル・ブルーっ!」
ムサシとセファイドが激突する!
鋭い斬撃がセファイドを襲い、蒼き衝撃がムサシを飲み込む!
そして、結果は・・・
「おい!両方とも無傷だぞ!」
観客の誰かがそう声を上げた時、セファイドのライトガードにヒビが入る!
「ムサシって奴の勝ちかっ!?」
興奮するギャラリー、だが・・・
「ピキッ・・・パリーン!」
その瞬間、ムサシのライトガードが壊れる音がした・・・


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