第五話

 

大きな木がまばゆい光に包まれている。

ここはラボックの森の一番奥に当たる場所

そして精霊界に最も近い場所でもあった。

そして光はだんだん収まっていった。

「しまった!人間界に堕ちちまった!」

光はこぶし大の大きさになってしゃべった。

こいつは『ヴォルト』雷の精霊である。

極まれに精霊は人間界に堕ちてくることがある

堕ちた精霊は精霊界に戻れない、というか方法がない。

「ったく近くに人いないかなぁ・・・」

なぜ人を求めているかと言うと

そのままの状態でいると消滅してしまうからだ。

だが人と融合すれば消滅する心配はなくなる。

「むっ!人の反応感知!北に三十キロの所にいる!」

といってヴォルトは飛んでいった。

そしてヴォルトがついたところには

血の海に倒れている竜がいた。

「ヤバイ!この人間死にかけてる!早く融合しなきゃ!」

そう言って竜の体内に光の玉は入っていった。

……そして三十分後……

(俺は死んだのか?)

そう思い竜は目を開けた。

まず視界に入ったのは床一面に広がる真っ赤な血であった。

それが自分のものだと理解するまでに数秒かかった。

(俺は確かグレンとかいう奴に刺されたんだ)

そのことを思い出し自分の腹を触ってみる。

傷口は跡形もなかった。

(やっぱり夢だったのか?)

ふとそんなことを思うが目の前の血を見れば

現実だとわかる。

竜は起き上がった。全身に違和感は特になかった。

完全に起き上がったその時!

(やっと目を覚ましたか。)

頭の中でそんな声が響いた。

「な、何だ、今の声!?」

(俺はヴォルトって言うんだ。よろしくな!)

「よろしくなってお前なんだよ?」

(俺か?俺は精霊だよ、精霊。)

「精霊ってあのよくファンタジーに出てくるあの精霊か?」

(違う!俺はそんな精霊どもと同じではない!)

「そんなって俺が言いたい精霊ってどんなのかわかるのか?」

(お前の考えてることはすべてわかる。

なんたってお前の中にいるからな。)

「何ィーーーっ!?」

(そんなに驚くな。わかった、説明してやるよ。)

ヴォルトは説明した。

自分が消滅寸前だったこと、

竜が死ぬ寸前だったことなどすべてを。

「なるほど、そうだったのか。

それじゃあ俺はお前に命を救われたのか?」

(そりゃお互い様だ。俺だって消える寸前だったからな。)

「ふーん、そうか……あっ!そうだリーノが!」

(分かってる、あの女の子の事だろ。)

「そうだよ連れ去られちゃったんだ。どうしよう!?」

(男が何グダグダ言ってやがるんだ!

取られたもんは取り返す!そんなの当たり前だろ!)

「そうだよな、でも俺武器持ってないし……」

(武器なんざいらねぇよ!男の武器は拳だ!)

「だけど剣持ってる相手にどうやって立ち向かうんだよ!?」

(わかった。お前に魔法を教えてやる。)

「魔法って俺も使えるのか?」

(当たり前だ、子供だって使える。)

「どうやるんだ?」

(まず魔法がどういうものか説明してやる。

お前ちゃんと理解してないだろ?)

「あんまりよくは理解してない。」

(よく聞いてろ。

魔法と言うのは精霊界にいる精霊に力を送ってもらい、

それを行使することを言う。

まず精霊の力を送ってもらう。

これは誰にでも出来る。

しかしその力をコントロールしなくてはならない。

そのために必要なのが『気』の力だ。『気』は誰でも持っている。

気の役割は主に二つ。

一つ目は送ってもらった力を制御すること。

たとえば、気で丸い玉を作ったとしよう。

その中にたとえば『火』を送ってもらう。

すると送ってもらった『火』は玉の中に充満し

炎の玉が完成する。後はそれを投げるなり

相手に直接ぶつけるなりして攻撃すればいい。

二つ目は自分の身を守るためだ。

気を発生させずに火を呼ぶととんでもないことにになる!

まず一番近くにいる人間にその力がすべて流れ込む。

するとこの場合、呼んだ奴が炎に焼かれて死ぬ。

そうならないために自分を

気でガードしとかなくっちゃいけないわけ。

だから『気』を引き出し、

コントロールすることが出来れば誰にだって使える。

分かったか、ここまで?)

「あぁ、わかった。」

竜はそう答えた。

何故かと言うとリーノは詳しく話しすぎていたため竜には

理解しにくかったが、ヴォルトは比較的かいつまんで

説明したためわかりやすかった。

「それじゃあ気の出し方教えてくれよ。」

(気の出し方は簡単だ、イメージするんだ!)

「イメージしろっていわれても……」

(簡単だって!目を閉じてみろ。そして自分の手に

何かこう力が溜まっていくような感じを想像しろ!

よくマンガで出てくるだろ?気を練るってやつだよ。)

竜は言われたとおり目を閉じ気を練ってみた。

「何か力がたまってきたような……」

(おう!ちゃんとたまってる。じゃあ今度は目をあけてやってみな!)

今度は目をあけて気を練ってみた。すると……

「おいヴォルト!なんか緑色の変なもやもやが

俺の手にまとわり付いてるぞ!」

(いいんだよそれで。って言うか、

初めてでそれだけ気を練れるとは……

お前、実は天才?)

「からかってないで次はどうすればいいんだ?」

(今度は全身に纏うような感じでやるんだ。)

「全身?分かった。やってみる。」

竜が全身に神経を張り巡らしたとき

全身を淡い緑の光が包んだ。

(すごいな、トール!お前ホントに天才かもよ?

だって手に気をためるの、普通一ヶ月くらいかかるのに

ほとんど初めてで全身も出来ちまうんだもんな。)

「そんなことはいいから!次は?」

(次は魔法だ、普通だったら精霊の名前を

思い浮かべながら、「送ってくれ〜」って思えばいいだけなんだが

お前は俺と融合してるから普通の魔法は使えない。)

「え゛っ!?じゃあどうするんだよ?」

(まぁ落ち着け。俺と融合している=雷しか

使えないってわけだ。)

「そういえばお前、雷の精霊だっけ。」

(そう!だから俺の力を直接引き出して使うんだ。)

「やり方は?」

(簡単、俺の力は雷だ。気を練ったときのように

今度は雷が出るようにイメージするんだ。)

「わかった。やってみる。」

竜は言われたとおり想像してみた。すると……

バチバチ!と雷が手に纏わりついてきた。

「いて!なんだ!?」

(感電したんだよ。気を纏ってなかったんだ

当たり前だよ。今度は気を一緒に想像しながらやってみな)

気を練りつつ雷を想像した。

バチバチ!今度もまた雷が纏わりついてきた。

「あっ!今度は痛くない。」

(わかったか?気がどれだけ大事か。

後はその拳で相手を殴りつければいいだけだ。)

「でも剣を相手にどうすればいいんだよ。」

(そんなの気合だ気合!気合で何とかするんだよ!)

「んなむちゃくちゃな……。」

(グダグダいってないで助けに行くぞ!)

「助けにってどこに居るんだ?」

(ここから東に五キロほど行ったところに居る。

今は動いてないからそこで野宿するみたいだぞ)

「わかった。行こう!」

竜はヴォルトの言っている場所へと向かった。

 

リーノを連れ去った奴らはヴォルトの言っていた通り

五キロほど東に行ったところで野宿していた。

「グレン様。急がなくてもよろしいのですか?」

グレンと呼ばれた少年は

「急ぐ必要はあるまい。それより少し出かけてくる。」

「どこへお出かけになられるのですか?」

「森の中を歩いてくるだけだ。」

「わかりました。」

返事を聞くとグレンは森の中に消えていった。

 

それと同じ頃、竜はやっと追いついていた。

「あそこに煙が立ってる!もうすぐだ!」

(あわてるな!奴らに見つからないようにしろ!

不意打ちが出来なくなる!)

「あぁ、わかったよ。」

竜はさっきからこのセリフばかりである。

「何か作戦は?」

(特にない、だが奴らの内の一人が

あそこから離れている。仕掛けるなら今しかない!)

「そうだな。一人でも相手が少ない方がいいよな。」

そう言って竜は近づいていった。

 

竜はグレンたちが野宿している所まできた。

そこは少し開けた所であった。

様子を見ると一人が眠っていて

他の2人はリーノを見張っていた。

「どうやって助ける?」

(う〜ん、そうだなぁ。もう少し様子をうかがうか)

「わかった。」

素直にうなずく竜であった。

……二分後……

ガサゴソ…ガサ!

竜の居る位置と反対方向の茂みの中で物音がした。

それに気付いた男たちは何事かと茂みの方を見ると、

中からゴブリンが姿をあらわした。

「グエーーーー!」

ゴブリンが吠えた。なんとも情けない声が響いた。

男たちはすぐにゴブリンに向かっていった。

(チャーーーーーンス!行け!竜!)

「わかってるよ。」

そう答えながら竜は一目散にリーノの元に向かった。

男たちはゴブリンに夢中で竜の存在には気付いていなかった。

「大丈夫かい?」

竜がそう聞くと

「はい!平気です!」

とリーノは元気に答えた。

「よし!逃げるぞ!」

そういってそのままリーノを連れてその場を去った。

男たちは最後までゴブリンと戦っていて

リーノが連れ去られたことに気付いてなかった。

 

「ふぅ、ここまで来れば大丈夫かな?」

一時間ほど走って竜は言った。

「そうですね。森の中だからたぶん大丈夫だと思います。」

とリーノが答えた。

「それにしてもあいつらなんだったんだろう?」

竜はふと、思ったことを口に出してみた

「私には心当たりありません。」

「そうか、でもリーノの事狙ってきてたよな。」

「何ででしょう?」

とそこまで話した時!

「こんな所にいたか。」

近くでそんな声がした。

「なにっ!もう追いつかれたのか?」

竜が驚くのも無理はない、竜とリーノは

全速力でここまで逃げてきたからだ。

「そんなことは簡単だ。それよりリーノを渡してもらおう。」

リーノを後ろに隠すように竜が前に出た。

「今度は渡さないぞ!」

(いまだ竜!雷を使うんだ!)

「うおーーーー!」

声を上げながら気を練り雷を想像した。

竜の手に雷が纏わりつく。

「ほぉ、雷の魔闘拳か……。いいだろう私も素手で相手をしてやる。」

そう言うとグレンはかまえた。

「行くぞ!」

竜が叫びながら突っ込んでいく。

「はっ!」

グレンが気を練る。するとグレンの両手に

黒い光のようなものが纏わりついた。

(なんだあれは!?)

ヴォルトが驚く!次の瞬間!

目の前まで迫っていた竜の拳をグレンは

その黒光りする手で受け止めていた。

「なかなかいいパンチだ。しかし甘いな。」

「くそっ!まだだ!」

竜は何度も殴りかかっていった。

しかしそのすべてを受け止められてしまう。

「チクショウ!」

「さて、もう遊びを終わりにしよう。」

そう言うとグレンは竜のみぞおちにパンチをくらわした。

「がふっ!」

竜は三メートルほど飛んで木にぶつかった。

いままでオロオロと見てることしか出来なかったリーノは

ぐったりとしている竜に駆けよった。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、メチャクチャ痛いけど。」

苦笑いをしながら竜が答えた。

「さて、リーノ。私ときてもらおう。」

グレンがリーノを捕まえて連れていこうとする。

しかし、竜としてはここで引くわけには行かなかった。

そして、立ち上がり。

「そんなことはさせねぇ。

連れてくなら俺を殺してから行け!」

それを聞いたグレンは

「わかった。死ね。」

それだけ言うと竜に向かってきた。

黒光りする手がすさまじい速さで竜に襲い掛かる

しかし竜は何とかそれをかわした。

「これでも喰らえーーーー!」

竜が懇親の力を込めたカウンターをグレンにはなった。

「なにっ!しまった。」

攻撃をかわされるとは思っていなかったグレンは

竜のカウンターを喰らった。

しかし竜の一撃はグレンに決定的ダメージを与えられなかった。

「くっ!そのくらいの攻撃で私を倒せると思ったか!」

グレンはまた黒光りする手で竜の腹にパンチを食らわした。

「ぐわっ!」

しかし今度は飛ばされなかった。

どうやら決定打にはならなかったが

相手の戦闘力を削ることは出来たらしい。

だが腹に二度目の攻撃を喰らった竜は

立っていることが出来なかった。

ドサッ。

竜が地面に倒れた。

「なかなかいいパンチだった。私をここまで消耗させるとは、

面白い。特別生かしておいてやろう。貴様、名をなんと言う?」

グレンが竜に聞く

「竜……不破竜だ。」

竜はそう答えて気を失った。

「なるほど、トールか…覚えておいてやろう。」

そうつぶやきグレンはリーノを連れ去っていった。

 

またもや主人公が気絶して終わってしまった!しかもメチャクチャ長いし(爆)

それとちょっと文がおかしいのは気にしたら負けや★

……六話はどうなることやら(謎)

って言うかやっと話が進んできた。

第六話も見てみる
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