第六話


竜は目を覚ました。見知らぬ天井が見えた。

どうやらどこかの小屋のベッドの上らしい。

「ここは……。」

とりあえずそうつぶやいてみる。

「やっと目を覚ましたか。」

やれやれ、といった口調の声が聞こえた。

竜は起き上がり声のしたほうを向いた。

するとそこには椅子に座って

こっちを見ている男がいた。

「あなたは?」

とりあえず聞いてみる。

すると男は

「俺はセシル・ウッドワードっていう者だ。

ちなみに年は32だ。お前さんは?」

「俺は、不破 竜って言います。」

「そうか、フワ トオルって言うのか。

ところでフワはなんで森の中で倒れていたんだ?」

竜は今まで起きたことを話した。

目が覚めたら森の中にいたこと、

リーノに出会ったこと、

そしてリーノがさらわれたことなどを。

「ふむ、つまりフワは」

「あの、竜でいいです。」

「わかったトールだな、それでトールは

一目惚れした女の子を目の前で連れ去られたってわけか。」

「えっ!一目惚れ!?」

「だってそうだろ?

別に好きでもない女の子の為に普通命張れないだろ?」

そういわれて竜は考えた。

(俺はリーノのこと好きなのか?)

その時

(好きなんだろ?)

「!?、ってその声はヴォルトか!?」

竜はヴォルトに話し掛けられ驚いた。

(俺にはわかるぞ。お前がどういう女の子のことを好きなのか。

リーノはまさにお前の理想の女の子じゃないか。)

「そうなのかなぁ〜。」

などとヴォルトと話していると。セシルが

「なぁ、それで結局の所どうなんだい?」

と聞いてきた。竜は少し考え

「多分セシルさんの言うとおりです。

俺、リーノに一目惚れしたんだと思います。」

と答えた。セシルはうんうん、とうなずくと

「若いっていいねぇ」

などと推定年齢中年くらいのセリフをはいた。

(そうだねぇ〜若いっていいねぇ〜)

などとヴォルトもうなずいていた。

「それにしても、よく生きてたな。

あの暴れん坊王子様グレン・ベルファストと戦って。」

「暴れん坊王子様?」

「あぁ、そういえばトールはこの世界とは

違うとこからきたんだっけ?」

「はい、そうです。」

「じゃあ今この世界がどうなっているか知らないな」

「はい、あんまり詳しくは。」

少ししかリーノから聞いていなかったので

竜はそう答えた。

「よし!説明してやろう。

今この世界では戦争が起こっている。

シェリダン帝国が隣国のサライナに侵攻したためだ。

その時、シェリダンは魔獣を大量に魔界から呼び出し

そいつらを操って攻撃を仕掛けた。

魔獣なんかとは戦ったことがないサライナの軍は

あっさりやられてしまい侵略された。

調子に乗ったシェリダンは次の国に攻め込もうとしたが

シェリダン以外の国は協力して追い返した。

そして連合を組み何とか今も対抗している。

ちなみに私たちがいるこの大陸は連合国に属している。

そしてシェリダン帝国の第一王位継承者が

グレン・ベルファスト。奴は必ず自軍の先陣を切ってやってくる

まぁ、つまり戦いが好きな奴なんだ。」

「なるほど〜、だから暴れん坊王子様。」

「そう。そして奴は一人で連合軍の兵を千人以上は倒している。」

「うそぉ!ホントに!?」

竜は驚いた。

「ホントだ。だから『よく生きてたな』って言ったんだよ。」

竜は一時思考が停止した……。

「そこでだ。」

セシルがかたまっている竜に話し掛けた。

「お前。強くなりたくないか?」

「え!?」

いきなり質問され竜は驚いた。

「俺がお前を強くしてやる。」

「え!?」

「俺の手にかかればお前を強くさせるのなんか簡単だ。」

「ホントにですか?」

驚きつつも竜は聞いた。

「あぁ、だってお前

精霊憑きだろ?

「なっ、何でそれを!?」

今まで以上に驚く竜。

「だって俺も

精霊憑きだからわかるんだよ。」

「そ、そうだったんですか。」

「あぁ、それにさっきお前ヴォルトとか言ってたろ?

あ、ちなみに俺は重力の精霊憑きだから。」

「………ヴォルト知ってた?」

(当たり前じゃん。)

即答された。

「で、強くなりたいのか?それともなりたくないのか?」

セシルが聞いてきた。

竜は少しだけ考え、そして答えた。

「強くなりたいです。そして必ずリーノを取り返します!」

「よしっ!じゃあ今からはじめるぞ特訓!」


竜とセシルは小屋の外に出た。

小屋の外は広い平原だった。

森なんか全然見えない……。

「よし!今から特訓をはじめる!いいな!」

「あの、セシルさん」

「セシルではない!師匠と呼べ!」

「わかりました。師匠、では聞きます。

私が倒れていた森はどこへ行っちゃったんですか?

「お前が倒れていた森か?あぁそれなら

あの山の向こうだ。

そう言ってセシルはあまりに遠くて

ちっちゃくなってしまっている山らしきものを指差した。

「…………。」

竜は絶句した。そして

(俺こんな人の弟子になってよかったのかなぁ)

と思った。

「もう質問はないか?」

セシルが聞いてきた。

「はい、ありません。」

「最初の特訓はあの山とこの小屋を3往復!

時間は日が沈むまで!」

「え゛―――――――!マジですか?」

「どうした?何でそんなに驚いてる?」

「だって山ってあの山でしょ?」

竜はさっきセシルが指差した山らしきものを指差しながら言った。

「あれ以外に山があるか?」

とセシルが言った。

周りを見渡すとあのちっちゃい山以外は平原しか見えない。

「だって日が沈むまでって何時間もないじゃないですか?」

「俺なら二時間で出来るぞ。」

平然と答えるセシル。

「いや、あんたが出来ても俺が出来ないし。」

「まぁ、最初だから出来なくてもいい。

だからさっさと行って来い!」

しぶしぶ走り出す竜。

「がんばってこいよ!」

と言うセシルの声が聞こえた。

日が沈んだ。竜はやっと1往復した。

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、ぜぇはぁ。」

「よし!30分休憩だ!」

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、ぜぇはぁ。」

「休憩の後は組み手をやろう!」

「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ、ぜぇはぁ。」

「さて、休憩時間に夕飯を食べてしまおう。」

「はぁ、はぁ、はぁ。」

「今日は俺特性ビーフシチューだ。うまいぞ〜」

何とか呼吸を整えた竜は一言

「はい……。」

とだけ答えた。

夕食後

「さぁ組み手だ。かかって来い!」

「いやかかって来いって言われてもどうすればいいんですか?」

「俺に一撃でも入れられたら今日はそれでおしまいだ。」

「はい。わかりました。」

竜はかなり疲れていた。

実際百キロを四時間で走りきったのだ。

一応補足しておくと精霊憑きは

常人の何十倍もの身体能力を持っている。

竜はなってから日が浅いので

常人の数倍程度しか力が発揮できなかったのである。

そんなわけで竜は早く終わらせて寝たかったので

最初から全力で向かっていった。

だが一発も攻撃を当てることが出来なかった。

結局竜が倒れて修行初日は終わった。

次の日(ここからはトールの日記から抜粋?)

午前中は筋トレだった。

午後は昨日と同じで

3往復しろと言われたが

結局2往復しか出来なかった。

夕食後は昨日と同じで組み手だった。

最後まで一撃当てられなかった。

さらに次の日

午前はやはり筋トレだった。

午後は今日も3往復走れといわれた。

何とか3往復走りきった。

夕食後は組み手。今日は一発だけ当てることが出来た。

そして一ヶ月の月日が流れた……。

「と言うわけで特訓は一時中断だ。」

「ってどういうわけですか!」

「やはり説明が必要か。しかたがないよく聞け。

私は実は連合軍第246特殊部隊隊長という職についている。

やはり仕事はちゃんとしなければならない

そして今の私の仕事は部下のスカウトだ。

私の部隊はなんせ特殊だから自分で部下を

見つけてスカウトしてこなければならない。

と、ここまではわかったか?」

「はい、一応。」

「そして、今朝届いた手紙によるとどうやら

ビリングス王国にいい逸材がいるとの情報が入った。

だから私はそいつをスカウトしなくてはならない。

だからお前の特訓は一時中断だ。わかったか?」

「はい、仕事はやはり大事ですからね。

わかりました。スカウトがんばって下さい。」

「そこでだ。お前にはリヒテンシュタイン王国のある

リヒテンシュタイン城に向かってもらいたい。」

「はぁ?なんでです?」

「それはお前も私の部隊のメンバーだからだ。

「なっ!」

竜は驚きそれ以上言葉が出なかった。

「特訓の続きも残っているからお前は1人で城に向かえ。

私もスカウトが終わったらすぐに城に向かう。わかったな?」

「は、はい。わかりました。」

「よし、旅費は机の上においてある。じゃあな!」

といって師匠は飛んでいった。

「師匠って飛べたんだ……。」

などとつぶやきつつこれから俺どうなっちゃうんだろ?

とか思っている竜であった。

 

一抹の不安を残しつつ旅立つ竜。彼は無事城までたどり着けるのか?

そしてついに七話ではアイツが登場!こうご期待!

第七話も見てみる(工事中)
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