「おい、みんなもう集まってっかぁ!?」
バラスは乱暴に会議室のドアを蹴り飛ばし、中へ入る。
「おやおや、バラス様。ドアを開ける時はもっと丁寧にお願いします。
魔王側近ともあろうお方がマナーを知らぬはずはありますまい。」
そう言ってきたのは、高貴な鎧に身を包んだ悪魔だった。
「魔王公爵、ブランドンか。
相変わらずうっせーな、おめーはよ。」
バラスはそう言ってブランドンを軽くにらむ。
「んで・・・」
バラスは目線を外し、それを見た。
「ディーベル!ダグラス!てめーらも遊んでんじゃねぇ!」
視線の先にいたのは、ケータイをいじる金髪のどこにでもいそうな少年だった。
背中に生えている悪魔の翼さえなければだが。
ダグラスと呼ばれて振り向いたのは、おっとりとした白衣を着た少女だ。
怪しげな薬の入ったフラスコを見つめ、光るメガネが怪しい。
「うふふ、これで成功ですぅーv」
怪しい液体を混ぜ合わせるダグラス。
その刹那。
「ちゅど〜ん!!」
大きな音と共に爆発が起こり、辺りを吹き飛ばす。
側にいたバラスの体も黒焦げになった。
「ぎゃあああ!」
叫び声を上げたのはディーベルだった。
「ダグラスっ!てめぇっ!このケータイ機種変すんのどんだけ高かったと思ってんだ!
魔界ドコモの最新型だぞっ!ふざけんなぁーっ!!」
「もーぅ。」
うるさそうにダグラスが言う。
「失敗しちゃったんだから、仕方ないでしょー?えいっ!」
そう言ってその液体をディーベルに向かって投げる。
「うわっ!?何だこりゃあ!?ぎゃああああ!!」
超液体生物のぬるぬ君だよー。一緒に遊んであげてー。」
「げっ!何だこれ!服溶けてんじゃねーか!ダグラス!お前ざけんなコラ・・・ぎゃあああ!!」
「・・・・・」
バラスは部下に持ってこさせたタオルで自分の顔を拭く。
「おい、ラプスドゥーガはどうした?」
「頭痛いんで帰るって早退しました。」
「・・・・・てめーらがそんなんだから、恐怖の大王は来ねーわ、
ハルマゲドンは起こらねーわっ!!

怒りと共にバラスの必殺魔法、バラス・ブレードが炸裂した。
「もう、終わりましたかな?」
紅茶を飲みながらブランドンが聞く。
「・・・てめーも何でいつもそうマイペースなんだよ。」
バラスは疲れきった様子で答えた。
こいつらが、バラス自身に次ぐ実力を持つ魔界の五大悪魔と呼ばれる連中ということを考えると、
さらに疲れが倍増していくような気がした。
「とにかくだ!」
そう言って全員の方へ向き直る。
「今日てめーらに集まってもらったのは他でもねー。
オレらの君主、魔王・ガルム様んコトだ。」
そう言ってバラスはテーブルを叩く。
「てめーらも知ってのとーり、元々はオレとシニーベルの2人、
あと死んじまったデレヴィーユとてめーら、ブランドン、ディーベル、ダグラス、あとラプスドゥーガ。
いわゆる五大悪魔が中心になって魔界を統治してきた。
だが、最近それに異変が生じている。」
「スコーピオンのこと、ですか。」
ブランドンが言う。
「あぁ、デレヴィーユが死んでからふらりと現れ、いつの間にかその後釜に収まっちまった。
しかも今やガルム様はヤツの言いなりだ。ヤツがどんな手を使ったのかはわかんねーがな。」
バラスは天を仰いだ。
「明らかに、ガルム様の様子がおかしい。オレらの前にすら姿を見せなくなっちまったし、
スコーピオンに実権を預けたり・・・今までのガルム様じゃあ考えらんねーことだ。
オレもシニーベルも、最近は雑務に追われてちっともヒマがねぇ。今も無理に時間を作って話してんだ。
そこで、てめーらにも協力してもらいてぇ。中級魔族じゃあもうラチがあかねーんだ。」
一癖も二癖もあり、できることなら頼りたくない連中だが、今はそれより他に選択肢がなかった。
何故なら、シニーベルと2人で話し合い、行き着いた結論が・・・
(スコーピオンの目的は・・・!いや、まさか・・・な)
今のバラスにできることはただ、その結論が間違っていてくれ、と願うことだけだった。


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