いれいざぁ・あなざぁあのひとをさがして

【この物語はフィクションです。
実在の人物・団体等とは一切関係はありません。
・・・たとえ、どんなに似ていたとしても。】

チュン、チュン・・・
小鳥のさえずりが聞こえる。
いい朝だ。
「さぁーって、今日も気合を入れて特訓、といくかっ!」
ケフェウスの町の安宿の一室、オレは大きなあくびをしながら体を伸ばした。
「うむ、今日は町外れのメイルスパンの地下洞窟まで足をのばすとしよう。」
横のベッドに座っていたサムライ風の少年が言う。
ジェイサード学園の1次試験まであと2日。
オレ、リックス・クルズバーンと彼、ムサシ・アイハラは
ひょんなことから意気投合し、こうして2人で試験突破へ向けて特訓をしているのであった。
「とりあえず、その前に朝メシでも食べに行くでござる。
『腹が減っては戦はダメダメ!』とは先人のコトバでもあるし。」
「いや、何かソレ間違ってないか?」
そんなことを言い合いながらオレたちは剣を持ち、宿を出る。
「うーむ、何か良い飯屋はないものか・・・おっ!あんな所に拉麺屋が。」
「ラーメン屋?あんなところにそんな店あったっけ・・・?」
うーん、何かヤな予感がするんだけど・・・
「ガラッ」
「はいはい、いらっしゃーい!やでーっ★」
ドアをあけるといきなり元気のいい声が響いてきた。
「はいはい、2名サマやな★
奥の方のカウンター空いとるでー!」
ごーいんにオレたちを奥へと連れて行く店長。
胸には「ラーメンチェーン・洞窟」「店長・蘭道明」と書いてあった。
・・・っつーかこの店、どーゆーセンスなんだ?
そして、オレは素朴な疑問を尋ねてみる。
「ところで、あんた、何日か前に会ったことなかったっけ?」
「気にしたら負けや★」
・・・絶対どっかで会った気がするんだが。
「ふっ、細かいことを気にしていては真の漢になれぬぞ少年。」
一番奥のカウンター席に座っていた男がラーメンをすすりながらつぶやく。
緑の帽子と緑のマント、右目が黄色で左目は青だ。
・・・変わった人だなぁι
「うむ、まったりこってりとしていてそれでかつ味にキレがあり麺の固さも申し分ない。
だが強いて言うならチャーシューが少々弱めである。
やはりわしとしてはもうちょっとチャーシューのコクがあった方がよいと思ってみるのだがどうだろうかタオくんよ。」
と、オレらそっちのけでラーメンについて語り出す彼。
「うーん、やっぱり来てもらって正解やったなー★
的確なアドバイスありがとなーっ★あ、あんさんら、これメニューや★」
店長は彼に話し掛けながらオレらにメニューを手渡す。

【メニュー】
すうどん     ― 28ワース


何故。
「いやー、おかげで看板メニュー『道ラーメン』のええ改良法思い付いたわ★
さすがは帝王やなー★」
「やめてくれい。今はただのアトラッチャンよ。
しかしそろそろ待ち会わせの時間だが、迷っていないであろうかひうりん。
そういえばBちゃんは元気でやっているのだろうか、ひうりんともども心配である。」
「ひゅーりん、まぁきっと色々あるんや、忙しいやろしなー★
あ、あんなアホは心配せんでもえーよ★
たぶん今頃どっかで殺虫剤まみれや★」
メニューを手に固まっているオレらを尻目に、謎な会話を続ける2人。
オレらはとりあえずすうどんを2つ注文し、会話を続けている2人を無視して店を出た。
「・・・謎な店だったな。」
「そうでござるな。」
そうお互いつぶやくながらメインストリートへ向かって歩き出すオレたち。
っと、メインストリートに向かうにつれてだんだん人通りが多くなってくる。
「あれ・・・?ちょっといくらなんでも人多すぎねぇか?
いつもも賑わってるけど今日は特に・・・」
「ああ!しまったっ!」
オレの言葉に叫ぶムサシ。
「今日は市が立つ日でござるっ!
こんな日は遠回りして行った方がよかったと・・・」
「げげっ!」
そうなのだ、市が立つ日。
ただでさえ賑やかなこの町のメインストリートが戦場と化す日なのである。
世界各地から集まった様々なアイテムを手に入れようと、国中から多くの人が集まるわけで。
「とりあえず、はぐれたら一巻の終りだ、離れないように手をつないで―」
そうオレが言い終るか言い終らないかのその時!
「いかん!遅れるでごわす!」
「ちゃんこの材料が手に入らなくなるでごわす!」
「ちゃんこ!」
「ちゃんこ!」
「ぼよぉぉぉぉ〜ん!」
な・・・何でよりによって関取の大軍がっ・・・!
オレはきりもみしながら、あさっての方向へ飛んで行った・・・
おのれ作者・・・ッ!がんっ!
「っ痛ぅぅぅ・・・!」
どうやら、地面に墜落する前に何かに頭をぶつけたらしい。
「はぅ〜・・・痛いよぉっ;」
可愛い感じの声が響く。
振り向くとしゃがんで頭をかかえた緑の髪の女の子がいた。
ピンクのリボンや星型の髪飾りに・・・ケモノ耳!?
・・・気のせいだ、たぶん目の錯覚に違いない。
それとも新手のアクセサリーの一種、なんだろーか・・・うん、きっとそうだ、たぶん。
とか強引に自分を納得させないと、
この小説が何か別の方向へ行ってしまいそうで怖いしなぁ・・・ι
とにかく!どーやらこのコにぶつかってしまったらしい。
「あ、ごめん、だいじょうぶだった?」
「み、なんとか・・・だいじょーぶみたいですv;」
頭をおさえながらも笑顔で返事を返してくれたので、オレとしても助かった。
「はわ、すごいですねvどーして空から飛んできたんですかぁっv?」
「・・・まぁ、いろいろと事情が。」
「みvおもしろいヒトっv!
あ、ボク、ヒューリ=ヴァントーズv
「かざけも」って呼んでねv♪」
何で「ヒューリ=ヴァントーズ」で「かざけも」なんだろう・・・とか思ったが、
口に出すとまた色々とトラブルが起こりそうだからやめておいた。
「あー、オレはリックス。リックス・クルズバーンだ。よろしk・・・」
とか言ってる最中に思い出した。
ムサシ!
「やべぇっ!あいつと思いっきりはぐれちまったっ!」
「ほぇ?どーしたのv?」
「いや、悪い。オレちょっと仲間とはぐれちまって・・・どうしようι」
「はぅv大変だねぇっv;
あ、そ言えばボクも確か人と待ち合わせをっv!
でも・・・あれ?誰と待ち会わせしてたんだっけv?」
困惑するかざけも。
「わぁぁv!どおしよぉ!?誰とどこで会う予定だったんだっけー;!」
どーやら本気で忘れたらしい。
・・・オレの責任か?やっぱ。
「うーん、一応オレの行き先は決まってるからな。
あんたが忘れちゃったのも、たぶん・・・オレがぶつかったからだと思うし。
その人探すの、手伝うさ。」
さすがに急いでるからってこのまま彼女を放っておくのも何か悪い気がして、
オレはそう言った。
「ほぇ、手伝ってくれるのv?みvありがとだようっvv♪」
心底嬉しそうな態度をとるかざけも。
「えとね、「どうくつ」ってコトバ、何かひっかかるのv」
ここいらで洞窟と言えば、町外れにある「メイルスパン山の洞窟」しかない。
ふもとには有名なライスク寺院がある、あのメイルスパン山の地下洞窟。
つまり、オレの特訓の目的地である。
何という好都合だろう。
え?ご都合主義?
・・・ほっとけ。
「じゃあ、一緒に行こうぜ。何か解るかもしれないし。」
「そだねvじゃあ、れっつごーっv♪」
こーしてオレたちはメイルスパンの地下洞窟へ向かった。

ハズだった。
「・・・で、ここはどこだろぉv?」
「メイルスパン山じゃねーことだけは確かだな。」
出発から1時間後、目の前に広がる海を見ながらオレは答えた。
海水浴のシーズンではないので、辺りに人の姿は全くない。
そう、確かオレの記憶によると・・・

オレ:「洞窟は確か町の北にあったはずだけど・・・北ってどっちだっけ?」
かざ:「こっちだよーv♪たぶんv(根拠ナシ)」

それから・・・

オレ:「っつーか、気のせいじゃなければ方向間違ってるよーな・・・」
かざ:「あーv!あのもんすたーかあいーっv♪」
オレ:「オイちょっと待てーっ!」

・・・まぁそんな感じだったっけ。
「み、ゴメンね;ボクのせいで・・・;」
「まーいーさ、あははははー。」
力なく笑うオレ。
「あ、見て見てvキングクラーケンがタコ踊りしてるよーv★
おっもしろぉいっv♪」
しかしまぁ、こーゆーのを「癒し系」とでも言うんだろーか。
まったく、のほほんとしてて何と言うか・・・ってちょっと待て。
「キングクラーケンだぁっ!?」
・・・・・マズい。
キングクラーケンと言えば海王類に属する最強クラスのモンスターだったハズだ。
深海に生息、人前に姿を見せることはまずないが、遭遇した場合対処法は・・・ない。
「ギロッ!」
気づかれた!
「はわわ、どぉしよぉ;
ボク、あーゆーヌルヌルしたの苦手ーっ;!」
「そーゆー問題じゃねぇっ!逃げるぞっ!
っつーかケルベロスの時といい、何でこーなるんだよぉっ!?」
キングクラーケンの目が光った。
水系魔法・マリンドライブ!?
水流を操る上位魔法だ!
通常、魔法とは術者によって威力は変わる。
キングクラーケンのマリンドライブなんか食らったら・・・死ぬぞ!?フツーは!
「うわぁぁぁっ!?」
叫んだ瞬間、オレは町の中にいた。
「ほぇぇ・・・危なかったねぇっv★」
「え?」
一体何があったのか理解できず、目を白黒させるオレ。
「ん、今ね、ティンク使ったのv★
でも結構楽しかったねvv★スリル満点でv♪」
笑顔で言うかざけも。
「オレは寿命が2年3カ月は縮まったけどな。」
使えるなら早く言ってくれ、ホントに・・・
ティンクとは時空系の魔法で、大半が禁呪指定という時空系魔法の中にあって、
数少ない禁呪に指定されていない魔法の1つだ。
これを使うと、1度行った場所へ、一瞬にして移動することができる。
コントロールが難しいので、慣れるまでは大変だという話を聞いたことがある。
こいつ、見た目によらず実は結構すごい奴なんじゃ・・・
「あ!かあいい人形売ってるーっv♪」
・・・でもないか?
「てゆーか、さっさと洞窟行かなきゃマズいんじゃねーのかっ!?」
「はう・・・」
オレの言葉に涙目になる彼女。
「・・・何だよ、その何かを訴えるよーな瞳は?」
「うるうる」
「・・・・・」
「きゅんっv」
「・・・わかった、買ってやるから。
だからさっさと行くぞ、ホントに。」
「うわーいっv♪やった、ありがと、リッちゃんっvv★」
どーも感じ狂うなぁ・・・
てゆかリッちゃんって何だ。
あえてツッコミはせんけど・・・
っつーわけで、人形を買ったオレとかざけもは
今度こそメイルスパン山へ向かって出発したのだった。

「よーやく着いたな。」
目の前にはそびえるメイルスパン山とライスク寺院があった。
「うん、大変だったよねv」
かざけもも同意する。
そう、メイルスパン山まではほんの1時間くらいのハズなのだが、
またしても、こんなとこにいるはずのないモンスターに襲われたり、
彼女を手込めにしよーとちょっかいをかけてきた山賊を返り討ちにしたりと、
何せめんどーなことが山ほどあって、到着した頃には日が沈んでいたのだった。
手抜き?
・・・何とでも言え。
ムサシの姿は全く見えなかった。
やっぱ、こんなに遅くなっちまったから、もう帰ってるんだろうなぁ・・・
「うーん、どぉしよっかv?」
「ここまで来てすぐ帰るってのも何かシャクだしなぁ・・・」
何か今日、1日をめちゃくちゃ無駄に過ごした気がするのは・・・
気のせいじゃないだろーなぁ、やっぱ。
「それに、洞窟って言葉がひっかかるってんなら、
やっぱとりあえず潜ってみるしかねーんじゃねーかなぁ?」
歩きながらオレはそう言った。
「そっか・・・やっぱ、そだよねv」
どことなく気ののらなさそーな返事のかざけも。
どーしたとゆーのだろーか。
「うーん・・・何となく違う感じがするんだよね、
んと、うまく言えナイんだケド・・・こう、んにゃっとした感じでv」
「わかるかい。」
思わず即座にツッコミを入れるオレ。
「み、リッちゃんvナイスツッコミだようっv★」
「っつーか、喜ぶべきトコロなのかそれは・・・」
「にゃ、気にしナーイv」
「・・・なかなか楽しそうだな、ヒューリ=ヴァントーズよ。」
そんな会話を続けていたオレ達の前にそいつは急に現れた。
「色々移動してくれて・・・おかげで探すのにえらい時間がかかったぞ。
その男は・・・? フッ、なるほど、この世界の住人と接触していたか。
残念だが、こいつには運が悪かったと諦めてもらうしかないな。」
その男はこともあろうに、オレの方を見てそうぬかしやがった。
「お前が一体何者で何をしようとしてるのかは知らんが・・・
今の言い方ではオレを殺すと言ったように聞こえるぜ?サイコさんよ。」
「そう言ったつもりだが?」
オレの言葉に皮肉たっぷりの返事をする男。
「まぁ、それは後回しだ。
俺の仕事はまずこいつを連れて行くことだからな。」
そう言って、かざけもの方をあごで示す。
「しかしまぁ、邪魔するつもりなら・・・当然、順番は逆になるがな。」
「リッちゃん・・・」
「その言葉、後悔すんじゃねぇぞっ!?」
かざけもの言葉を聞かず、オレは剣を抜き、男に斬りかかった!
「うるぁぁぁぁぁっ!」
が、剣は空を斬る!
「・・・遅い。」
いつの間にかオレの後ろに移動していた男がつぶやいた。
次の瞬間、オレの体は空に浮いていた。
そのまま地面に激突する!
「ぐああああっ!」
背中を強打し、そのまま倒れるオレ。
「リッちゃんっv!」
かざけもがオレの側に駆け寄ってくる。
「ふん、他愛もない。」
男はそう言って指を鳴らした。
「その少女を捕まえろ!少年はお前らの好きなようにしてもいい。」
その言葉が合図のように!
現れたデザート・ゴーストとフライングデビル、そしてワイバーン!
いずれもこんな所にいるハズもない連中ばかりである。
「言い忘れていたが俺はモンスター・マスターでね。
この世界レベルのモンスターならこの通り、
自由に呼ぶことも、操ることもお手のもの、ってわけだ。」
「この世界」・・・そう言えばさっきもそんなことを・・・
さっきはただのサイコさんだとばっかり思ってたいたが、
どーやら本当に異世界の住人なのかっ!?
異世界。その存在は研究により、ある程度知られている。
例えば、オレたちはこの世界には存在しない「風」や「音」、「雷」といった魔法を
空間魔法により、呪文体系ごとこの世界に引っ張り込んで使っていたりする。
だが、あくまでもその程度だ。
異世界に移動する程の技術はこの世界にはない。
だが、異世界の方にはその技術があると言うのか!?
「じゃあ昼間のキングクラーケンとかも・・・」
「ああ、お前らの近くに手頃なモンスターがいたからな。
俺が着くまでの間、相手をしてもらおうかと思ってな。
それと、言い忘れていたが、寺院の連中にはしばらく眠ってもらった。
助けなんかは期待しない方がいいぜ。」
「くっ・・・」
オレは体を起こした。
打ちつけた背中が痛いが、動けないほどではない。
「かざけも、逃げろっ!」
オレは叫ぶと、再び剣を取り、跳んだ!
「破砕剣っ!」
デザート・ゴーストの頭を踏み付け、男を狙う!
「ぐああっ!」
叫び声が聞こえる。
だが、男の声ではない。
そう・・・オレが上げた声だ。
ワイバーンの吐いた炎がオレを背後から襲ったのだ!
痛い!あまりの痛さに立っていられない!
オレはその場に崩れ落ちた。
「愚かな・・・実力の差も解らないとはな。」
「それは違うよっ!」
吐き棄てる男を正面から見据え、かざけもは叫んだ!
「リッちゃんは、ボクを守るために戦ってくれたんだもん!
だから・・・今度はボクがリッちゃんを守るのv!」
だが、そうは言っても男の力はオレにも怖い程に分かっている。
気持ちは嬉しいが・・・正直、彼女がこいつに勝てるとは思えない!
「無理だ、こいつは強すぎる!
早く逃げろっ!かざけも!」
「だいじょうぶ、だよv」
かざけもは立ち上がり、オレにその笑顔を向ける。
「ボク、負けないからv!」
風が、集まってくる・・・
光が、胸の前で構えた手に産まれる・・・
「何をするのかは知らんが、これは戦い・・・ 残念ながら待ってやる気にはなれんな。」
男はそう呟き、指を鳴らす!
魔法は詠唱から発動するまでにタイムロスがある・・・
フライングデビルの雷撃!間に合わないっ!?
オレは反射的に持っていた剣を宙に投げた!
「ダガガガガガガガッ!」
金属製の剣は雷撃からオレ達の身を守り・・・
「リッちゃん、ありがとっv」
その瞬間、呪文は完成した!
「いくよっ・・・v
いっけぇっ!ルナウインドっv!
吹きつける風!
辺りを水色に染めながら、モンスターたちを薙ぎ飛ばし、
同時にオレの体を癒していく!
オレも初めて見る魔法である。
・・・何故かキラキラ輝く星や月なんかも風と一緒に飛んでいたりするが、
そこらへんはあえて気にしないことにする。
男とモンスターをどこか遠くへ吹き飛ばし、
そのえらく賑やかな魔法台風は爽やかな一陣の風を残して消えていった・・・ように見えた。
「あ゛。」
そう、すぐ目の前にあったライスク寺院が・・・半壊していた。
そして
「くぉらぁぁぁぁ!寺院を壊したのはお前らかぁぁぁぁ!」
扉から怒鳴りながら出てくる和尚さんたち。
『しばらく眠ってもらった』とは言え、
さすがに寺院を半壊させる程の衝撃を与えれば目覚める・・・だろう。
「に、逃げるぞかざけもっ!」
オレはそう叫ぶと、彼女を連れて走り出した!

「あはは、今日は楽しかったねv」
オレ達はケフェウスの町に帰ってきた。
「まぁ・・・ちぃーっとハードだったけどな。」
彼女の言葉に、オレはそう言った。
「でも、すまねぇ、結局洞窟は・・・」
「だいじょうぶだよvボク、ちゃんと思い出したからv」
オレの言葉を遮るように彼女は笑って言った。
「・・・は?」
「あのね、さっきの・・・和尚さん見て、完全に思い出したんだv
どこで、誰と待ち合わせてたのかv」
固まったままのオレに、笑顔で言うかざけも。
「えっと、ついて来てくれるv?」
彼女は腕をつかむと、一軒の店の前までオレを連れてきた。
何か、見た事がある店だなぁ・・・と、思っていると、かざけもはドアを開けた。
「ガラッ」
「はいはい、いらっしゃーい!やでーっ★」
ドアをあけるといきなり元気のいい声が響いてきた。
「はいはい、2名サマやな★
奥の方のカウンター空いとる・・・おお!ひゅーりんや!
待っとったで〜!あんま遅いと心配するやんか〜!」
声の主の胸を見る。
「ラーメンチェーン・洞窟」「店長・蘭道明」。
・・・・・
あれだけ人を引っ張り回しといてこーゆーオチかい。
「あ、和尚ーv元気してたかなv?」
「おおひうりんではないか。」
と、朝のラーメンに詳しいお客さん。
「いやー、久し振りやなぁー★どや、一杯?」
そんな会話を続ける3人を見ながら、
あのお客さん、どこらへんが「和尚」なんだろう?
ちうか呼び名は「かざけも」じゃなかったっけ?
さらに言うなら店長何者。
といった疑問に頭を悩まされていた。
そんなオレに声をかけるかざけも。
「あ、リッちゃんv今日はどぉもありがとねっv
ボク、とぉーっても楽しかったよっv」
「うむ、ひうりんをよくここまで連れてきてくれた。
感謝するぞ少年。うむ、良いチャーシューである。んぐんぐ。」
と、ラーメンを食べながら「和尚」さん。
「ホンマ、後苦労さんやったな★これウチのおごりやー★」
と言って器を差し出す謎店長。
何故か、今回もすうどんだったのはあえて気にしないことにする。
「っつーか、かざけも、一体あの男は何だったんだ?」
オレは気になっていた疑問を口にする。
「えーっとねぇ・・・」
彼女はちょっと考えてから言う。
「ボク、今、ちょっと狙われちゃってるんだよね;
色んな世界を通って、追っ手を捲こうとしてるんだケド;」
「は?」
「ひゅーりんは異世界の、とある国のお姫さまなんや★」
と謎店長。
「んで、お父サマが亡くなったら・・・叔父サマとかが色々とね;」
その言葉で大体予想がついた。
王族に権力争いなどのイザコザが多いのはどこの世界も同じらしい。
「だから、困ってたの;そしたら、和尚が助けてくれるってv」
「うむ、ひとまずレインバレーに連れて行こうと思っておる。」
「和尚」さんはそう言って、ラーメン2杯目に突入した。
「つまり、国の中が落ち着くまで、しばらく姿を隠しとこうってことか?
けど、隠れてたら、逆にその間に国がヤバくなる気がするんだが。」
「平気や、しまはん、大ちゃん、しっぽちゃんやちゅちゅはんにlongちゃん・・・他にもたくさん頼りになる仲間がおるからな★
ひゅーりんさえ狙われんかったら、勝利は時間の問題や★」
オレの疑問に謎店長が答える。
「元々、ひうりんは隠れる事に反対であったのが。
しかしまぁちょっとした事情があったのだ少年よ。」
3杯目のラーメンに手を伸ばしながら「和尚」。
「事情?」
「うん・・・;」
どこか照れるような困ったような表情を浮かべるかざけも。
「使う魔法が強力すぎて、味方や街まで巻き込むから困るんや★」
謎店長の言葉にオレはイスからずり落ちた。
まぁ確かに、あの魔法を街中でブッ放したら大問題だろう。
こんな状況で敵が襲ってくるのは、主に街中である。
「特に現在、ひうりんの専用魔法と化しておる、
直系の女性王族専用極限魔法・ルナウインドの威力は脅威的ですぎょん。
敵にも、町の市民にものう。」
「和尚」は4杯目のラーメンにパクつく。
オレは心の中で納得した。
周囲の全てを破壊しつつ、仲間を癒す魔法・ルナウインド。
だが、たとえ市民そのものに害はなくても、
街や家など・・・市民達の安全を脅かす可能性は十分にある。
「あ、あかん、そろそろゲートが開く時間やで★
2人とも、用意ええか?」
謎店長が腕時計を見て言う。
「む、そうか。馳走になった、タオくんよ。」
「和尚」は結局、1人で5杯のラーメンをたいらげてしまった。
「ゲート?」
「そや★この時間、この場所に開くハズなんや★
そやから、ウチ、ここに店開いたんや★」
・・・やっぱ、この店長、謎だ・・・
「み、リッちゃん、今日はどもありがとっvv★」
そんなオレにかざけもはこちらを向いて挨拶する。
「ホント、とっても楽しかったよっvv★」
「あ、いや、こっちも色々、楽しかったぜ。サンキュっ!」
ヴンッ!
オレたちが挨拶してるうちに、辺りの空間が歪み、
黒い穴のようなものが発生する!
「うし、予定通りや★
このタイムゲートはライブス界、2003年のアサギ国に着くハズや★
向こうにはライラがおるから、安心して行って来ぃな★」
「うむ、かたじけないタオくんよ。」
謎店長の言葉に頭を下げる「和尚」。
「では行こうかひうりん。」
「みv」
かざけもは名残惜しそうに「和尚」について行く。
「リッちゃんっv!人形、大切にするからっvv★
ボクのこと、忘れないでねっvvvv★」
「ああ、忘れねぇよ。かざけも!
がんばって仲間といい国、作れよっ!」
かざけもは頷き、そして・・・消えた。
「行っちゃった・・・な。」
オレはそう呟き・・・殺気!?
ふと横を見ると、フライパンを持った謎店長!?
「いや〜、ひゅーりんはそうゆ〜けどな〜、やっぱ他人に知られるとマズいんや★
ごめんな〜★」
「ノォォォォォォォッ!!」
笑顔で振り下ろされたフライパンが、オレの脳天を直撃した・・・

「起きるでござるーっ!」
オレはその声で目を覚ました。
「あ・・・あれ、ムサシ?オレは一体・・・?」
「昨日、拙者がず〜っと洞窟で待っていたと言うのに、
帰ってきたらお主が宿の前で寝ておったのだ。
全く、お主ときたら・・・それでは試験に落ちても文句言えんでござるぞ。」
呆れたような口調で言うムサシ。
「す、すまん・・・」
「しかし、寝言で言っておった『かざけも』とゆーのは誰でござるか?
まさか、お主の女ではなかろうな?なぁーんてな、はっはっは!」
ごーかいに笑い飛ばすムサシ。
あれは夢・・・だったのか?
どこからどこまでが?
それにしちゃ、やけにリアリティあったよなぁ・・・
そんなことを思いながら、身支度をして外へ出る。
「うわぁっ!?」
当たり一面、ひと、人、ヒト。
「そっか、今日も市が立つ日だったっけι」
「全く、リックス〜ぅ、お主が遅くまで寝てるからでござるよ〜。」
うらめしげにムサシが言う。
「悪い悪い、ホント悪かったってば、ムサシι」
「ドンッ!」
謝ろうとしたオレの背中に何かがぶつかる。
「あ、すみません!」
振り向くオレ。
そして何かイヤな予感・・・
「あ・・・」
ぶつかった少年と目が合う。
「えーっと、ワシはちゅちゅ=桐沢と言う者なのですが。
心配でこっそりついて来たはいいけど
ひゅーりん・・・人を見失ってしまって困ってます。 できれば探すの手伝ってもらえると・・・」
「逃げるぞムサシっ!」
オレは少年の言葉の途中で、ムサシの服のすそを掴んで逃げ出した。


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