いれいざぁ・あなざぁほわいと・くりすます

「とっとと起きやがれこのバカ息子〜!!」
・・・以下は毎度同じパターンなので申し訳ないが一部割愛させていただくι
オレはとっさに受け身をとり、母さんに尋ねた。
「また、町長さんが呼んでるの?」
「むむっ!リックス!あんた、あたしのケリのダメージをそこまで軽減するとは・・・
腕を上げたわねっ!?」
「いや、どーでもいーから。」
さすがに毎日食らってりゃな・・・と言いたかったが、
口に出すと絶対鉄拳が飛んでくるのでやめておいた。
「どーでもいーって何よ。ま、いーわ。
そのとーりよ。てなわけでいってらっしゃい。」
「え・・・と、オレの朝メシは・・・」
「殴られないうちに行った方が身のためだと思わない?」
「・・・はい。」

「で、今日は一体何の用なんですか町長。」
「おやおや。」
町長さんはこちらを振り向くと困った顔で
「君の言い方だと、わしがいつも君を呼びつけているように聞こえるが。」
「事実でしょうがっ!」
「カリカリすると体によくないぞい。ホッホッホ。」
いけしゃーしゃーと・・・あいもかわらずこの人は・・・
「・・・誰のせいだかわかって言ってます・・・?」
町長さんはオレの言葉を聞き流し、
「まぁそこに座っとくれい。」
と、テーブルの前のイスを指差した。
そして何やら冷蔵庫あたりををごそごそとしていたかと思うと――ってちょっと待て。
冷蔵庫って・・・マジかオイ。
と、とにかくおにぎりを2つ出し、オレの前に置いた。
「まぁ、メシでも食いながら話すかい。ホッホッホ。」
「はぁ・・・じゃあお言葉に甘えて・・・遠慮なく・・・」
そう言ってオレはおにぎりの包装をむいて、食べ始めた。
「実は今年のクリスマス恒例行事でな・・・」
「待て。」
オレは手を止め、速攻でツッコんだ。
「まさか、オレにやれってんじゃないでしょーね?」
「ピンポーン
浮かれた口調でそう言い、天井からたれているヒモを引っ張る。
すると、いつの間に用意していたのか、くす玉が割れ、
「リックスくん大正解!おめでとう!」などと書かれている紙や、
たくさんの紙吹雪がオレの上に落ちてきた。
「・・・で?」
「ありゃ、ウケんかったか・・・ι」
オレの冷たい視線に寂しそうな顔をする町長さん。
ああ、ヒマなぢぢいってイヤ・・・ι
「コホン!ま、まぁそんなことを言ってくれるな。
こればっかりはくじじゃから、文句を言っても仕方ないじゃろて。」
「ま、まぁそうですけど・・・」
説明しておこう。
ここ、ウィルの町では、毎年クリスマスになると、ある行事をするのだ。
まず、町中の10〜18歳の子供たちの名前を書いたくじを用意し、
町長さんが引くのである。
選ばれた子供は夜のうちにプレゼント(町の経費で買ったもの)を
みんなに配るってわけだ。
12月24日は町中の人がドアにカギをかけてはいけないことになっている。
おまけに証明書も出されるので、住居侵入罪にもならないぞ!念のため。
まぁ、いわゆる「サンタさんのプレゼント」ってわけである。
もちろん、サンタ役の子の名前は公表されないので、
町長さんと本人以外にはナイショなのだ。
サンタ役の子は、翌日に町の子供たちからの感謝の手紙と一緒に
町長さんから直接プレゼントを渡される・・・
オレの知ってるかぎりではこんなとこかな。
「・・・ところで、オレのぶんのプレゼント、
まさかとは思いますけど・・・出ますよね?」
町長さんは不敵な笑みを浮かべると、
「もう渡したと思うんじゃが。」
オレは視線を目の前に戻し・・・気付いた。
「え・・・あ・・・ま、まさかっ!?」
「おにぎり2つ。ごーかじゃろ?」
「これ、1つ100円のコンビニおにぎりじゃないですかっ!
しかもバーコードのとこに、セ●ンイレブンって書いてあるしっ!」
「男の子がこまかいことを気にしちゃあいかんぞい。」
「しますよっ!せめて480円の牛カルビ弁当くらいにしてくださいよっ!」
「ふっふっふ・・・うちの町に、そんな予算があると思ったか!
「胸を張って言うことかぁっ!
な・・・ならば210円のモ●バーガーのハンバーガーで手を打とう!
何で販売中止になったハンバーグサンドぉぉっ!?」
「な・・・なんか話があらぬ方向へ・・・ま、まあよい!とにかくっ!
今年のサンタはお前に決まったんじゃから、頼んだぞいっ!」
町長さんはごーいんに話を戻し、オレの肩をたたく。
「ったく、わかりましたよ。じゃあプレゼント用意してきますから、
代金、出してください。」
オレの言葉になぜか笑みを浮かべる町長さん。
「君も知っての通り、この町は財政難でのぉ・・・」
「待てやオィ。」
な・・・なんか急に背すじが寒く・・・ι
「ま、よりによって今年に当たってしまった
自分のくじ運の悪さを恨むんじゃな。ほっほっほ。
あ、これ証明書。」
「あ・・・あの・・・自費っスか?ちょっと!ねぇ!?」
「まぁ、そう言うでない。
『1人はみんなのために』とゆー素晴らしい先人の言葉があるじゃろうが。」
「早い話がオレにギセイになれってことじゃねーかっ!」
「純真な子供たちや、いたいけな大人たちのためじゃ。」
「純真な子供はともかく・・・大人って・・・」
言いかけて、ウル目で自分を指差している町長さんに気付く。
「欲しいのかアンタはっ!?」
「むろんじゃ。」
町長さんは力いっぱいそう言ったかと思うと、
オレをイスごと外まで蹴り飛ばした!
「じゃ、がんばっとくれい。
尊いギセイとなった君のことは忘れんぞ。」
「バタン!ガチャガチャ・・・ガシャーン!!」
・・・カギかける音までしっかり聞こえるしぃ〜っ!
「・・・ってオイっ!」
ふと我に返るオレ。
「ちょっと待てっ!勝手に『尊いギセイ』にするんじゃねぇっ!
忘れろそんなことさっさとっ!
ってゆーかてめぇっ!またこのパターンかオイコラっ!?
開けろこのくそぢぢいーっ!」
怒鳴りながら必死でドアをあけようとするのだが、
相変わらず頑丈なこのドアはびくともしない。
オレはもう半ばあきらめの心境で出かけるのだった。
しかし、あのじーちゃんの体のどこにあんなキック力が隠されているのだろう・・・?
世の中、わからんことだらけである。

「あ〜あ・・・」
自腹でプレゼント用意・・・って言われてもなぁ・・・ι
「何か・・・自分でプレゼント作るかι」
オレはウィルの町北の山にいた。
ここは結構自然が多く、素材を見つけるのには好都合なのだ。
・・・が。
やっぱり人がいないのである。
その理由は・・・
「おでましか。」
「グルルルル・・・!」
マウンテンスライムにゴブリンプラス!
どちらも通常のモンスターより1ランク上の敵だ。
「シャアッ!」
「虚空薙っ!!」
オレの新技・虚空薙!
剣圧の連続攻撃が炸裂する!
まさか、何の用意もせずにこんなとこに来るはずがない。
疾風斬りに改良を重ねた結果、
連続攻撃によって威力が2,3倍になったのだ!
「って・・・あれ?」
が、技は大きくそれ、近くの岩壁をブッ壊したにすぎなかった。
「あちゃ〜・・・練習ではうまくいったのに・・・ι」
「ギロッ」
モンスターの目がこちらを向く。
「あ・・・ちょ、ちょっとタンマっ!」
って・・・ゆーこと聞くわけないよな・・・ι
「グォォォォ!」
「うわぁぁぁっ!?」
「グシャッ。」
へ?
さっきの虚空薙の影響だろーか・・・
急に上から岩が落ちてきて、モンスターたちを一瞬で潰してしまった。
「・・・ラッキーι」

「これで・・・よしと。」
カナルの実をバックに入れるオレ。
「とうっ!」
音を立てて着地する。
町の子供たち47人分のプレゼント用意完了っ!
バックに入りきらなかったぶんは自分で装備してある。
・・・っつーかこの格好、
知らない人が見たら絶対山賊に間違われるな・・・ι
などと思っていたその時!
「おいそこのテメー。
オレらの領地に勝手に入っていいと思ってるんだろうな?んぁ?」
「さっきの落石もてめーのせいだろ!?」
・・・早速間違われるのかよ、オィ・・・ι
まぁ・・・落石はホントにオレのせいだけどι
現れたのは今のオレとよく似た姿の連中5人組。
「いや、オレ・・・違うんだけどι」
「ンなカッコして誰が信じんだよ?
テメー朝山組のメンバーだろが。」
・・・ヤ●ザかよ、オイι
確かに、頭にはキスの木で染めた迷彩柄の頭巾。
額にはビンティパールで作った自作ゴーグル。
背中には、これまたビンティパールを削ったカナルの実鉄砲。
しかもオレ流のこだわりで見た目は本物の銃そっくりである。
etcetc・・・
これで一般人と信じる方がおかしいかもしれないι
「とにかくテメー、今すぐ仁科組の領地から出て行きやがれ。」
「・・・揃いも揃って、センスねぇ名前・・・ι」
「ンだとオラァ!?」
オレの素直な感想が聞こえてしまったらしい。
正直に言っただけなのに・・・
「テメー弱ぇくせにナマイキなんだよ。」
「ナメてっと殺すぞ。え?オラァ!」
「朝山組が何ほざいてやがんだ。ええ?」
・・・結局こーなるわけねι
「かまわねぇ!やっちまえ!」
リーダー格の男の声に、その他のメンバーの銃がいっせいに火を吹く!
「やられてたまるかっ!」
オレはさっと飛びあがり、地面に向けて技を放つ!
「破砕剣!」
岩をも砕く大技!
街中で使うと先日のようにえらいことになりかねないが、
こういう・・・乾燥した地面の上で使うとどうなるか。
「ごほっ・・・ごほっ・・・ど、どこ行きやがった!?」
そう、この技の目的は敵を倒す事じゃない。
土砂を巻き上げて、敵を撹乱するのために放ったのだ。
「ち・・・ちくしょうっ!」
「やめろ!同士討ちになるぞ!」
思った通り、連中は混乱している。
大勢の敵は個別に討つ。戦闘の定石である。
敵のだいたいの位置は技を使う前に確認しておいた。
いきなり視界をさえぎられて、動く人間はまずいないだろう。
仲間が銃を持っているとなると・・・なおさらだ。
オレは1人に近づくと・・・
「二連斬っ!」
安心しろ。みねうちだ。
そう言いたかったが、
あまり長い間口を開けると口の中がよごれるのでやめておいた。
そして2人・・・3人・・・
視界が戻ってきた頃には敵は2人になっていた。
「こ・・・こいつ、ヤベぇぞっ!ひぃぃぃぃっ!」
「疾風斬り!」
逃げようとする山賊をオレの技が倒した。
「これで・・・あんた1人か。」
そう言うオレに、最後に残ったリーダー格の男は
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!
あんたは朝山組のメンバーじゃねぇな!?」
・・・などと言いやがったのだ。
「だから違うって言ってるだろがっ!
覚悟しやがれこのアホ山賊っ!」
「え・・・ちょ、ちょっと待ってくれっ!」
「問答無用!くらえっ!二連斬!!」
情けねー山賊のリーダーはオレの一撃を食らって吹っ飛んだ。
「さて・・・と。
急がなきゃな。クリスマスイブは今夜だぜι」

「で、オレの評判はどーだったんです?町長さん。」
翌日、オレはまた町長さんに呼び出されていた。
自作のアイテムの数々・・・ちょっと自信あったりして。
「うむ。それもあったのぉ・・・」
町長さんは手紙の入った箱を持ってきた。
「どれどれ・・・」
手紙その1。
『私はお人形が欲しかったのに、なんで鉄砲だったんですか。
9歳 女』
手紙その2。
『こどもじゃあるまいし、いまどきごぉぐるなんかつかわないっての。
5歳 男』
手紙その3。
『どうせなら、お金が欲しかったです。
14歳 男』
手紙その4・・・
・・・
「ま、そーゆーことじゃ。」
ポンと肩をたたく町長さん。
「・・・・・もとは・・・
もとはと言えばあんたがぁぁぁぁぁっ!!!
ふざけんなぢぢいっ!
あんたが金だしてりゃよかったんだろがっ!!!」
「まぁまぁ。それから―」
町長さんは暴れるオレの手をつかむと・・・
「がちゃり」
と、手錠をかけた。
「え?こ・・・これは一体?」
「うむ。」
オレの疑問に町長さんは答えた。
「メラルシティ警察から逮捕状がでていてのぅ。」
え゛。
「メラルシティって・・・」
「うむ。北の山をはさんでこの町と反対にある、
あのメラルシティじゃ。」
「な・・・なんで・・・オレ?」
「暴力事件の重要参考人らしいぞい。
なんでも昨日、
仁科組というサバイバルゲーム団体が1人の少年にボコボコにされたとか。」
「ちょっと待て。」
山賊じゃ・・・なかったのかよ?
そーいえば、山賊だなんて一言も言ってなかったよーな気もするけど・・・
正当防衛には・・・いや、過剰防衛だったのか、あれ?
でもオレ、リ−ダーが何か言おうとしてた時、問答無用で・・・ι
オレは顔から血の気が引いていくのを感じた。
「まさか・・・朝山組ってサバイバルゲームの団体と争ってるなんて事は・・・?」
「ん?知っとるのか?最近山のマナーの事でもめとるらしいが・・・」
「・・・・・」
数分後、
「リックス・クルズバーンくんだね。ちょっと来てもらおうか。」
と、警察官が入ってきた。
「・・・はいι」
涙を流しながら警官についていくオレの目に入ったものは・・・
雪だった。
横では小さい子が
「みてー!ママー!ゆきだよー!
あたししってるよ!ほわいとくりすますってゆーんだよね!」
などとはしゃいでいる。
・・・クリスマスなんて、だいっきらいだ。


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