いれいざぁ・あなざぁはぢめてのおつかい

「とっとと起きやがれこのバカ息子〜!!」
今日もいつものよーに横から猛烈なケリを入れられ、オレは目を覚ました。
「はうっ!な、何を・・・ぐふっ!」
「あら・・・今日はちょっと当たりどころが悪かったみたいだけど・・・
まぁそんな事は置いとくとして・・・ほら、とっとと起きなさい!」
あのぉ・・・オレとしてはできれば置いとかないで欲しぃんですけど・・・ι
「ウィルの町の町長さんが呼んでるのよ!じゃリックス、行ってきてね。」
「え・・・っと、オレの朝ご飯は?」
行ってきてね
「・・・はい。」
こーしてオレはしぶしぶながら出かけるのだった。
まぁ、町長さんがオレを頼るのも、
一応オレがこの付近で一番強い事を知ってるからで・・・
悪い気はしないんだけどね。

「これを隣町のステンリーに届けて頂きたい。」
唐突に町長さんはこう言った。
「は?」
「この包みを届けて欲しいと言っておるのだ。」
もう1回静かに町長さんは言った。
「やってくれるね?」
「イヤです。」
何でこんな簡単な仕事を・・・ι
こーゆー簡単な仕事に限ってトラブルの元になるのだ。全く・・・ι
ちなみにステンリーさんは学者肌の男性で、隣町・スティナバーグの町長さんである。
「やってくれるね?」
「イヤです。」
「やってくれるね?ありがとう。」
そう言って町長さんはオレの手に包みをつかませる。
「そんな・・・イヤって言ってるのにむりやりーっ!」
泣き叫ぶオレを無視して町長さんはオレの横にやって来た。
「ちなみに、なくしたら弁償だからね。」
その笑顔、絶対何か企んで・・・ってわぁぁぁぁっ!?
町長さんはオレをイスごと思いっきり蹴り飛ばした!
ドアの外までブッ飛ぶオレ。
町長さんは
「ほっほっほ。がんばっとくれい、リックスくん。」
などとほざくとドアをばたんと閉めた。
おい待てぢぢい。
「こらっ!てめぇっ!開けろっ!開けやがれぢぢいーっ!」
そう言ってごーいんにドアを引くのだが、
いっこうにあかない。
ただ、中から町長さんの
「ほっほっほ。」
とかゆーフザケた声が聞こえてくるだけである。
・・・こんちくしょう。

オレは街道を歩いていた。
やはり、何だかんだ言いながらも仕事をするとは・・・
なんて優しいヤツなんだ、オレ。
・・・言っておくが母さんが怖いわけではない。念のため。
別に怒りのげんこつ100連発が怖いとか、
一週間ご飯抜きの刑が怖いとかゆーわけではないのだっ!
この際読者からの「やっぱ怖いんぢゃねーか」ってツッコミは気にしない事にする。
ウィルの町からスティナバーグまでは歩いて1時間程の距離だ。
オレは町のショップで買ったロースカツバーガーとてりやきチキンバーガーをほおばり、
町長さんの家の外に置いてあった剣を1本拝借し、
のんびりとスティナバーグへ向かっている、とゆーわけである。
ちなみにここらは眺めがよく、雑誌にも紹介される程の場所である。
森の中なのだが、左は崖になっていて、木々の間からの海が見える。
ん〜っ、びゅ〜てぃふぉ〜★
もっとも、ここらに住む人たちは見飽きてるし、
こんなヘンピな場所にやって来る旅人だってロクにいやしないので、
「隠れた名所」と化しているのだが。
ま、こーゆーのもたまにはハイキング気分でいいもんかな★
「おいこらてめぇっ!」
何せ眺めは最高なのだ。
「聞いてんのかオイっ!?」
ハンバーガーはおいしいし。
「無視すんなぁっ!」
・・・せっかくいい気持ちなのに、何やら背後が騒がしい。
「やかましいっ!あんまりうるさいと斬るぞッ!」
オレは振り向いて怒鳴った。
「斬ってから言うなぁぁぁぁっ!」
「むうっ!いきなりツッコミを返すとは・・・なかなかやるなっ!?」
「やかましいっ!うるさいと斬るって、もう斬ってるだろうがっ!
オレのお気に入りの鎧にキズを付けやがってっ!」
「何を言う!?ちゃんと言って2秒待ってから斬ったぞ!」
「じゃかしいわぁっ!」
文句の多いヤツである。
「だいたい、一体何なんだあんたは?
いきなり人をてめぇ呼ばわりしやがって?」
「ふっふっふ、オレは・・・って何を言わす!名前なんか教えられるかっ!
お前がウィルの町の手の者だという事はわかっている!
おとなしく包みを渡しな!そーすりゃ命だけは助けてやろう。」
こいつ、けっこーノリやすい体質なのかもしんない。
だが、オレに勝てると思っていることがそもそも間違いである。
「・・・寝言は寝てほざいた方がいーんでない?」
そう言って相手を観察する。
年齢はどーやら30くらい。
いかつい感じの男だが、あまり強くはなさそうである。
まぁ、大して珍しくもない「ごろつき」とかゆーものだろう。
「寝言・・・だと?ふざけるなっ!貴様ごと・・・き・・・うっ!」
男は急に腹に手をあてた。
そしてオレを指差すと、
「い・・・今ちょっとカゼ気味なのだっ!
トイレに行って来るからちょっとここで待っていろっ!」
そう言い残すなり、男はあさっての方向へ駆け出して行った。
・・・ぜってーアホだこいつ・・・ι
「疾風斬り。」
剣圧で遠く離れた敵を倒す技を放つオレ。
威力はそれほどないが、こんなアホを倒すにはじゅーぶんである。
さくっと音を立てて倒れる男。
「ま・・・待てぃっ・・・」
オレは向きを変えて再び歩き出した。
後ろから聞こえてくる男の声はあえて聞かなかった事にする。
じゃあね。名前も知らないヘンなおっさん。

「おいこらてめぇっ!」
町に入ろうとするオレを呼び止める声。
振り返ると・・・やっぱりさっきの男だった。
「ふざけんなっ!
待っていろと言ったのに人を斬りつけたあげく先に進みおってっ!」
・・・どこに敵に「待ってろ」と言われて待つヤツがいるんだ・・・ι
と、思ったが言うとまたややこしい事になりそうなので黙っておく。
「とにかくだ!おとなしく包みを渡せっ!」
「やかましい!こっちだってメシがかかってるんだ!」
こんなごろつき程度にビビって仕事をしくじった・・・
いや、仕事って程のレベルじゃないけどι
そんな事になったら間違いなく町長さんから母さんに連絡がいき、
一週間ご飯抜きの刑なんて事になるのは目に見えてる・・・
いや、その程度で済むかどうかすら怪しいι
「あんたみたいな情けない奴は三週間メシ抜きよっ!」
などと言われる映像が一瞬頭をよぎった。
「・・・メシがどーのとか、何をわけのわからん事を・・・
とにかくっ!腕ずくでも包みは頂くぞっ!」
言うが早いか襲いかかってくる男!
が、甘いっ!
「ニ連斬っ!」
ざしゅざしゅっ!
「な・・・」
がしゃんと音を立てて男の鎧が崩れる。
相手の鎧のつなぎ目をオレの一撃が立ち斬ったのだ。
「フッ!」
オレはちょっとカッコつけて髪をかき上げる。
「このオレを、リックス・クルズバーンと知ってケンカを売ってきたんじゃなかったのか?」
「な・・・リックス・クルズバーン・・・だと・・・!?」
驚愕の声を上げる男。
「ぜんぜん知らん。」
待てぇぇぇぇぇぇっ!
「てめぇっ!ふざけんなっ!オレを知らねぇのかぁっ!?」
「っていうか、そんな名前聞いた事もない。」
「知らなくても驚いてやるのが世間の付き合いってもんだろうがっ!」
「どーゆー付き合いだっ!ってええい!
貴様と漫才してるヒマなどないわぁっ!」
パチッ!
男が指を鳴らすと木の間からごろつきどもが出てくる!
その数なんと7人!・・・って驚くほどでもないかι
しかも虫に刺されたのか、全員顔が赤く腫れている。
もしかして・・・ずっと隠れていたんだろーか・・・
こいつら全員ヒマ人だ。
「ふっふっふ。1人ならうまくいっても、この数ならどうかな?」
ごろつきの1人が口を開く。
「ふーん・・・ま、んじゃあね。」
オレはそう言って走り出す。
「ってオイ待てっ!勝負して行けぇぇぇっ!」
後ろで何やら悲痛な叫びが聞こえるが、
落ちついて考えてみればここはスティナバーグの入り口。
町に入ればこっちのものだし、第一あいつらとは戦ってやる義理もない。
だいたい、8人もいるなら待ち伏せなんかせずに、いっぺんに出てくればいいのである。
そんな事もよーわからんよーな・・・
あんなアホ連中とは付き合うだけ時間の無駄って気がひしひしとするし。
とりあえず、あの連中振り切ってステンリー町長のとこに行こ。

「待っていたぞ、リックス。」
・・・そー言えば相手がオレの持っている包みを知っている時点で、
オレの行き先も知っていると考えるのが普通だよな・・・ι
ステンリー町長の家のすぐ前でオレを待っていたのはあのアホ8人組だった。
もしも・・・あいつらがステンリーさん達を人質にしていたのなら・・・
くっ!いくらアホでも悪人のはしくれって事か!
「ふふふ・・・この場で包みは頂く!」
陰からぞろぞろ現われるごろつきども!
1,2,3,4,5,6,7,8・・・って、オイ。もしかして・・・ι
「幸い、この家の入り口は町の裏通りだ!見つかる危険性は・・・」
「二連斬!」
しゃべっていたごろつきAがフッ飛ぶ!
「貴様っ!卑怯だぞっ!」
「フン!戦いに卑怯も何もあるかぁっ!」
端から見るとどっちが悪人だかわからないよーなセリフを叫びつつ、
オレはごろつきたちを倒していく。
「疾風斬り!二連斬っ!破砕剣っ!」
「ぎゃああああっ!」
どがぁぁぁぁん!
・・・まるで私刑(リンチ)だってツッコミは却下。
少々ステンリーさんの家が壊れても、全ては正義のためっ!
きっと許してくれるだろう。
「君たち何をしているんだっ!私の家をどーしてくれるっ!?」
噂をすれば何とやら。
家から現われたステンリーさん。
・・・やっぱりこいつらに「人質」だなんて方法、考え付きもしなかったかι
やつらが同時にに8人で襲ってきたあたりで何となく予想できたがι
オレは慌てて事情を説明する。
あ、とーぜん門を壊した犯人は微妙に事実と変えておいたが。

「なるほどな。」
うなずくステンリーさん。
「このごろつきたちが、荷物をね・・・」
「ええ・・・!」
倒れていたごろつきたちが立ち上がる!
「くっ!今日のところはオレたちの負けだっ!だが、次こそは・・・」
マンザイ男が言い終る前に!
「コルベット・シーリー。34歳。フレイアード王国出身。」
ステンリーさんの言葉に、男が凍りつく。
「ス、ステンリーさん、どーしてそんな事を!?」
「いや、ここに落ちていた財布に、車の免許証が入っていてな。
君のではないのかい?」
男の方を向いて言うステンリーさん。
・・・ってちょっと待て。車って何だ。
この世界に車なんてあったのかオイ。
・・・オイどーなんだ作者・・・ι
「逃げても無駄だ。大人しく捕まりたまえ。」
ステンリーさんの言葉に、コルベットはうなだれて両手を地面についたのだった。

「マルコス!クリューシェ!ステフ!シューブ!山田!」
「はい?」
「何でしょうか、町長。」
ステンリーさんに呼ばれて出てくる町役場の人たち。
彼らの協力もあって、戦意を失ったごろつきたちはシューブさん・・・
彼のコレクションの手錠をかけられ応接室に転がしてある。
世の中には妙なものを収集する人間もいるとは聞いていたが・・・ι
「さてと、それでは警察に連絡してくれ。あ、マルコス副町長、君は残って。」
てきぱきと指示を出すステンリーさん。
「さてと。」
みんなが出て行き、3人になったところでステンリーさんが口を開く。
「君が黒幕だ。マルコス副町長。」
「ええっ!?」
「な・・・」
オレも思わず驚きの声をあげてしまう!
「そんな・・・本当ですか!?ステンリーさんっ!」
「ああ。」
「まさか・・・まさかこんないきなり出てきたチョイ役の人が犯人だなんてっ!」
おい。
2人が同時にツッコむ。
「だって・・・名前だって作者に3秒で決められてたし、
今までだってロクに出てなかったのにっ!」
「いやそーゆー問題ではないし。」
冷静にステンリーさんがツッコミを入れる。
「ともかく、私の他に荷物が送られてくる事を知っていたのは
ウィルの町役場の人間と君だけだ!」
「ちょちょちょ・・・ちょっと待って下さいよ!」
さすがにごーいんな推理(?)に慌てるマルコス。
「町長は確かに私だけを別室に呼び、
町長が留守の時に預かれとおっしゃいましたけど・・・」
「その時ちゃんと盗聴機がないのは確認しただろう。」
・・・待て。そんな事してたのかあんたらはι
「しかし町長は同時に
ウィルの町役場の人間は全員知っているとおっしゃったではありませんか!
犯人はそちらの人間かもしれません!
まさか、『正直』をうたい文句にして
町長選で当選したステンリー町長が嘘をついた・・・
などという事はありますまい!
もし嘘なら、これを町の人々に知らせればとんでもないスキャンダルになりますよ!」
・・・なるかぁっ!
「ふふふ・・・マルコスくん。ウィルの町役場に人が何人いるか知っているかい?」
不敵な笑みを浮かべるステンリーさん。
「あ、そーいえばオレ、町長さん以外の人がいるとこ見た事ねぇ・・・ι」
オレの言葉に顔色が変わるマルコス。
「その通り。ウィルの町は財政難で、すべての仕事を町長1人でやっているのだ!」
・・・何っつー不景気な町だ。いつかきっと潰れるぞ、ウィルの町ってι
「確かにウィルの町役場の人間は全員知っているとは言ったが、
役場の人間が1人じゃないとは言っていないぞ、私は。」
いけしゃーしゃーと言うステンリーさん。
「恐らく、前回の町長選で私に破れた事を根に持っているのだろう。
確かにあの荷物が他の人間の手に渡ると大変な事になるからな。」
「く・・・何もかもお見通し・・・ってわけか。フッ、仕方がない。負けを認めよう。」
っつーか認めるの早ッ!
世の中みんなこいつやコルベットみたいなヤツばっかりだったらさぞかし楽だろうι
「ところで、その中身って何だったんですか?」
「ふむ。しかし、他言は無用だよ。リックスくん。」
マルコスに手錠をかけながら答えるステンリーさん。
「ええ、しゃべりませんけど・・・何なんです?
他の人間の手に渡ると大変な事になるって。」
「ふむ。実はな・・・」
そう言いながら中身を投げてよこす。
かなりぶ厚い本だ。
「なになに・・・風の月雨の日:ステファニーが私のドーナツを食べた。超ムカつく。
風の月魔獣の日:リックスが町を襲った野盗を逆に半殺s・・・」
そんな事もあったっけι
「鐘の月夢の日:手錠の事でシューブとクリューシェが大ゲンカ・・・
ってこれ、日記ですか!?」
「ああ。ウィルの町の町長との交換日記だ。
人に言えないよーな事なんかも書いてあるしね。」
「・・・おい。まさか・・・」
「人に見られたら大変な事になるわけだ!」
「なるわけねーだろがっ!」
オレの怒りのキックがステンリーのどたまに直撃した。
結局・・・アホな連中のアホなトラブルに巻き込まれたわけだ。
ものすごい脱力感とともに、オレは帰路に着いたのだった。
さっさと帰って・・・お昼ご飯食べよ。

ちなみに余談だが、コルベットは社会復帰した後
才能に目覚めたのか、何故か急にお笑いの道を歩み、一躍人気の漫才師に。
そしてコンビ結成に向け
リックス・クルズバーンという人物を探しているという噂があるが、
これはまた別の話である。


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