「僕は歌う、君のために。
    僕は戦う、自分のために。」
             ある少年の言葉より

「くっ・・・」
オレはショックだった。
「外見で敵を判断する。戦士として、最もしてはならないことだ。」
ジェイサード学園第1期生としてカール・C・ローズに師事。北海の魔王・デレビーユを倒し、
ヅィータルスタンのシュアード遺跡を発見した伝説のERAZER、
ダイン・ルーザスはかつてよくそう口にしていたと言う。
それなのに・・・オレはこの男をハッキリ言ってナメていた。
ランス・D・シコースキー。
その事を見抜き、オレのスキをついてくるとは・・・
判断力、頭脳もさることながら、あの魔法。
努力のたまものだろう。少しのブレさえもなく、正確にオレの弱点を突いた。
確かに、あの自信は伊達ではなさそうだ。
「フッ、まさか魔法が使えるとは思ってもいなかったか?」
「ああ、その通りだ。」
苦笑いをしながら答える。
「アンタのこと、ナメてた。正直、見た目に騙されてたぜ。
話した時から知性派のイメージだったからな。
まさか、魔法を使える学者さんを目指してるとは思いもよらなかったよ。」
「ハハハ。」
ランスもつられて笑った。
「これからの時代は、学者もただ机に向かっているだけではいけないからね。
遺跡や未開の地に入って、全く戦えません。じゃ困るだろう?」
「腕試しも兼ねてるってことか・・・」
「まぁ、そうだな。」
不敵に笑うランス。
だが、オレだって負けちゃいられない!
「いくぜっ!ニ連斬っ!!」
・・・が。
ランスは技を見事に避け、ナイフを投げてオレの後ろに回り込んだ!
「マリンドライブ!」
オレの腕にナイフ、続けて背中に呪文がヒットした!
ダメだっ!
「ぐあっ・・・!」
そう思った瞬間、オレは地面に叩き付けられた。
攻撃が・・・読まれている!?
「『君の試合は全て見させてもらった』と言ったはずだ。」
静かに言うランス。
「技を繰り出す時の腕の角度から死角まで、君の全ての動作の解析は終わっている。」
「・・・さすがは学者さんってとこか?」
オレは脇腹を押さえて立ち上がった。
「何、対策ソフトの研究にね。
データ解析による相手の行動パターン、及び動作の事前把握。
まぁ、さしずめ『ID戦闘』と言ったところかな。」
表情ひとつ変えずにランスは淡々と話す。
「では、今度は俺から攻めさせてもらうよ。」
そう言うとランスは呪文の詠唱を始めた。
「くっ!」
至近距離でこれ以上呪文を食らうのはまずい。
次に直撃を受けたら、間違いなくやられる!
オレは後ろに引き、迎撃態勢をとる。
さっきはオレの必殺技の1つ、破砕剣をランスの風魔法・ストームで相殺された。
だが、逆に言うなら。
破砕剣なら、呪文を相殺させることができる!
そして、そのまま砂塵にまぎれてランスに近づければ、二連斬も決まるハズだ。
さぁ、来いッ!
3,2,1・・・ランスの右手から魔法が放たれた!
「ストーム!」
「破砕剣っ!」
思惑通り、相殺!オレはそのまま剣を返し、続く技を・・・!?
「ヒュンッ!!」
飛んでくる3本のナイフを辛うじて避ける!
「まさかっ!?」
そう、ランスが左手で続けざまにナイフを投げたのだった。
「まさか、避けられるとは思わなかったよ。」
ちょっと驚いた顔のランス。
「左手でもナイフを操れるのか・・・
学者よりアサシンの方が合ってるんじゃないか?」
苦笑しながらオレはぼやいた。
「ふ、慣れればどうってことないさ。」
ランスのメガネが光った。
「破砕剣から二連斬に繋げようとした判断はいいが、
少々剣を返すのが早かったな。」
「っ!」
読まれてた・・・
「なら、これならどうだっ!」
オレは再び破砕剣を繰り出した。
「!?また同じことを繰り返す気か?」
違う。同じことじゃない。
オレは砂塵を巻き上げながら、後ろに引いた!
そして、腕に力を込める。
「疾風斬り!」
砂塵の中から疾風斬りを連続で繰り出す!
姿を隠せば、自慢のIDも役に立たないハズだ!
相手の位置は把握している。
右から、左から、弧を描いて、剣から生み出される空気の刃がランスを襲う!
「ならば・・・ストーミィ!」
ランスの声が響き、強烈な風が、オレ目掛けて吹き付ける!
「ぐああっ!」
オレは上へと吹き飛ばされた!
疾風斬りの空気の刃もどこかへ飛ばされてしまったようだ。
「ぐっ!」
何とか、着地の態勢をとる。
「な、何なんだ、今の魔法は・・・!?」
ストーミィ、とか言った。
だが、そんな魔法はオレの知識の中には存在しない。
一体どういう事なんだっ!?
「行動が読まれるなら、姿が見えなければいい。か・・・
だけど、姿が見えなければ、見えるようにすればいい。」
右手でナイフをくるくる回すランス。
「ストームの呪文の詠唱パターンを、ちょっと変えてみたんだ。
魔法は面白いよ。ちょっと変えるだけで全く性格が違うものになる。」
「っつーことは、これはお前のオリジナル、ってことか。」
全く、こいつは本気でとんでもねー野郎だ。
オレは果たしてこいつに・・・勝てるのかっ!?


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